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会社法(株式会社の機関、株式、設立、計算、資金調達、組織再編)

株式会社の機関、株式、設立、計算、資金調達、組織再編を最厚で扱う。

会社法

この章で覚えておきたいこと

  • 会社法は、まず 公開会社か非公開会社か取締役会設置会社かどうか を確認してから読むと整理しやすいです。招集通知期間、決議機関、少数株主権の保有期間などがここで変わります。
  • 株主総会、取締役会、監査役会、監査等委員会設置会社は、似た用語が多い一方で要件が少しずつ違います。半数以上過半数普通決議特別決議 の違いを曖昧にしないことが重要です。
  • 株式論点では、譲渡制限株式自己株式株式分割・株式併合少数株主権 が頻出です。株式数が変わるのか、資本金が変わるのか、反対株主の株式買取請求権があるのかを分けて覚えます。
  • 計算と資金調達では、剰余金配当は分配可能額の範囲内 であり、純資産額300万円規制 も残っていることを押さえます。社債は株式会社だけでなく持分会社も発行できます。
  • 合同会社は持分会社ですが、全社員が有限責任 で、定款自治が広い会社形態です。株式会社の感覚をそのまま当てはめると誤りやすいです。
  • 組織再編の入口では、会社分割は包括承継事業譲渡は個別承継 という違いが最重要です。契約移転、債務引受、反対株主保護の考え方が変わります。

基本知識

設立と定款

株式会社の設立では、定款が出発点になります。試験では、定款の記載事項を絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項に分けて問う問題が頻出です。

株式会社の定款の絶対的記載事項は、次の5つです。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名または名称および住所

この5つを欠くと、定款自体が無効になります。これに対して、取締役の員数や定時株主総会の招集時期は重要な事項ですが、絶対的記載事項ではありません。試験では、重要そうに見える事項を混ぜて絶対的記載事項ではないものを選ばせる形が多いです。

株式会社の機関設計

株式会社は、所有と経営を分けて考える会社形態です。そのため、株主総会、取締役、取締役会、監査役、会計監査人などの機関をどう置くかが問題になります。

まず軸になるのは、公開会社か非公開会社か、そして取締役会設置会社かどうかです。ここを外すと、その後の招集通知期間や決議機関を誤ります。

機関設計で特に頻出なのは次の3類型です。

  • 監査役会設置会社
    監査役は3人以上で、その 半数以上 が社外監査役です。さらに、監査役会は監査役の中から常勤監査役を選定します。
  • 監査等委員会設置会社
    監査等委員である取締役は3人以上で、その 過半数 が社外取締役です。さらに、監査等委員会設置会社は大会社かどうかを問わず会計監査人を置かなければなりません。
  • 指名委員会等設置会社
    執行役、代表執行役、指名委員会、監査委員会、報酬委員会が出てきます。監査等委員会設置会社と混同しやすいので、代表執行役が出たら指名委員会等設置会社 と切り分けるのが基本です。

株主総会

株主総会では、招集通知期間、開催場所、決議要件、議決権行使の例外がよく問われます。

招集通知期間は次のように整理します。

  • 公開会社は原則として2週間前までです。
  • 非公開会社は原則として1週間前までです。
  • 非公開会社でも、取締役会設置会社では定款で1週間未満に短縮できません
  • 非公開会社かつ取締役会非設置会社では、定款で1週間未満に短縮できる余地があります。

開催場所については、本店所在地でなければならないという一般的な法定制限はありません。試験では「本店所在地でしか開催できない」と断定した選択肢がひっかけになります。

議決権行使では、原則として統一行使ですが、他人のために株式を有する場合や会社の承認がある場合には不統一行使が認められます。また、特別の利害関係を有する株主は常に議決権を行使できないわけではなく、個別条文で制限される場面だけを切り出して考えます。

決議要件は、普通決議と特別決議の数字を正確に覚えることが重要です。

  • 普通決議
    原則として、議決権の 過半数 を有する株主が出席し、その議決権の 過半数 で決します。
  • 特別決議
    原則として、議決権の 過半数 を有する株主が出席し、その議決権の 3分の2以上 で決します。
  • 特別決議の出席要件は、定款で 3分の1まで 下げられます。

ここでは、過半数半数以上 を同じだと扱わないことが大切です。条文用語の違いがそのまま正誤を分けます。

取締役会

取締役会は、業務執行の意思決定と取締役の職務執行の監督を担う機関です。株主総会より少人数で機動的に動くため、決議や招集のルールも別建てで押さえます。

取締役会の基本事項は次のとおりです。

  • 招集通知は原則として 1週間前まで ですが、定款で短縮できます。
  • 代表取締役などは、原則として 3か月に1回以上、職務執行状況を取締役会へ報告します。
  • 決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数で決します。
  • 特別の利害関係を有する取締役 は、議決権だけでなく定足数計算からも外して考えます。
  • 取締役会では 代理出席による議決権行使はできません

試験では、株主総会の感覚で「委任すればよい」と読ませる選択肢が出ますが、取締役会は取締役本人の審議と監督責任を前提にしているため、ここを混同しないことが重要です。

監査役会と監査等委員会

監査役は、取締役の職務執行を監査する独立機関です。独立性を確保するため、任期や解任要件が取締役より重く設計されています。

監査役の基本事項は次のとおりです。

  • 任期は原則 4年 です。
  • 会社や子会社の取締役、執行役、使用人などを兼任できません。
  • 解任は株主総会の 特別決議 を要します。
  • 正当な理由なく解任したときは、解任された監査役が損害賠償を請求し得ますが、決議自体が当然に無効になるわけではありません。
  • 辞任した監査役は、辞任後最初に招集される株主総会で、辞任の事実と理由を述べることができます。

監査役会設置会社では、監査役は3人以上、その 半数以上 が社外監査役です。ここは 過半数 ではなく 半数以上 です。4人なら2人で要件を満たすので、この数字感覚を押さえておきます。

監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役が3人以上必要で、その 過半数 が社外取締役です。また、会計監査人が必置です。監査役会設置会社と違い、監査役ではなく取締役で委員会を構成する点も重要です。

少数株主権

少数株主権は、少数派株主にも会社経営を監視し、議題を出し、総会開催を求める手段を与える制度です。会社法では似た数字が多いので、何を請求する権利か とセットで覚えます。

公開会社である取締役会設置会社では、次の2つが特に重要です。

  • 株主提案権
    総株主の議決権の 1%以上 または 300個以上 を、6か月前から引き続き 保有する株主に認められます。
  • 株主総会招集請求権
    総株主の議決権の 3%以上 を、6か月前から引き続き 保有する株主に認められます。

数字だけを丸暗記すると混ざるので、提案権は「1%または300個」、招集請求権は「3%」と、役割に結び付けて覚えるのが有効です。非公開会社では6か月要件が外れる場面もあるため、設問が公開会社かどうかを必ず確認します。

株式制度と自己株式

株式制度では、譲渡制限株式、自己株式、株式分割、株式併合がよく出ます。どの制度が「株主構成」を調整するのか、「株数」を調整するのかを分けて理解します。

譲渡制限株式は、譲渡による取得に会社の承認を要する株式です。閉鎖会社で望まない第三者の参入を防ぐために用いられます。頻出論点は次の3つです。

  • 会社が譲渡承認請求に対して原則2週間以内に通知しないと、承認したものとみなされます。
  • 相続などによる取得は通常の譲渡と同じではありません。相続取得までコントロールしたいなら、定款で別の手当てが必要です。
  • 取締役会設置会社でも、定款で別段の定めを置けば譲渡承認機関を株主総会にできます。

自己株式は、会社が自社株を取得して保有する制度です。ここでは、取得、消却、併合の効果を切り分けます。

  • 自己株式の取得
    取得しただけでは株式は消滅しないため、発行済株式総数は直ちには減りません。
  • 株式の消却
    株式自体を消滅させるので、発行済株式総数が減少します。
  • 株式の併合
    複数株を1株にまとめる制度で、株式数は減りますが、資本金は通常そのままです。

株式分割・株式併合

株式分割と株式併合は、どちらも株式数を調整する制度ですが、決議機関と株主保護が異なります。

  • 株式分割
    取締役会設置会社では、原則として取締役会決議で行えます。株主の持株割合を変えないため、反対株主の株式買取請求権はありません。
  • 株式併合
    原則として株主総会の特別決議を要します。持株数や端数処理に影響が出るため、反対株主の株式買取請求権が認められます。

公開会社では、発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍を超えてはなりません。株式分割や株式併合の問題では、この4倍規制を絡めて誤りを作る設問がよく出ます。

剰余金配当と社債

剰余金配当では、誰が決めるのか、いくらまで配当できるのか、違法配当の責任は誰が負うのかを整理します。

剰余金配当の基本は次のとおりです。

  • 原則として、その都度 株主総会決議 で定めます。
  • 配当は 分配可能額の範囲内 でなければなりません。
  • 会社の純資産額が 300万円を下回る場合 は配当できません。
  • 金銭だけでなく、一定の場合には現物配当も可能です。
  • 分配可能額を超える違法配当では、配当を受けた株主にも返還・支払義務が問題になります。

社債では、株式発行と混同しないことが重要です。特に次の点が頻出です。

  • 取締役会設置会社では、募集社債の重要事項は原則として取締役会が決定します。
  • 社債権者集会は、議決権者全員が書面または電磁的記録で同意すれば、決議があったものとみなされることがあります。
  • 社債は株式会社だけでなく、持分会社も発行できます。
  • 社債券は必ず発行しなければならないわけではありません。

合同会社

合同会社は持分会社の一種ですが、全社員が有限責任である点が大きな特徴です。株式会社と違って株式はなく、社員の人的結合と定款自治を重視します。

合同会社の頻出事項は次のとおりです。

  • 1人でも設立できます。
  • 社員は全員 有限責任 であり、無限責任社員はいません。
  • 出資の目的は金銭その他の財産に限られ、労務や信用を出資目的にはできません。
  • 法人が社員になることも、業務執行社員になることもできますが、その場合は自然人の職務執行者を選任します。
  • 新たな社員を加入させるときは、定款事項に影響するため定款変更が必要になります。

持分会社なので柔軟性が高い一方、社員構成の変更がそのまま定款問題になる点を押さえておくと、株式会社との違いが整理しやすくなります。

組織再編の入口

この論点では、会社分割と事業譲渡の違いが特に重要です。どちらも事業を切り出して他社へ移す手段ですが、法律構造は大きく異なります。

会社分割は 包括承継 です。分割計画などで定めた権利義務が、原則として一括して承継されます。契約関係の移転もこの枠組みで処理しやすいのが特徴です。

これに対して事業譲渡は 個別承継 です。対象となる契約や資産、債務を個別に移していく必要があります。特に債務を譲受会社へ移し、譲渡会社を免責させたいときは、原則として個別の債権者の同意が必要です。

保護手続の違いも重要です。

  • 会社分割では、一定の場合に会社法上の債権者保護手続が問題になります。
  • 事業譲渡には、会社分割のような包括承継前提の債権者異議手続はありません。
  • 重要な事業譲渡や会社分割では、要件を満たす反対株主に株式買取請求権が認められます。

ここでは細かい再編手続全体まで覚えるよりも、まず 包括承継か個別承継か債権者保護の仕組みが同じか株主保護があるか の3点で比較できるようにしておくことが重要です。

この章のまとめ

  • 会社法の問題は、最初に 公開会社か非公開会社か取締役会設置会社かどうか を確認すると誤りが減ります。
  • 株主総会では、招集通知期間、普通決議と特別決議の数字、議決権行使の例外を整理しておきます。
  • 取締役会では、代理行使不可、特別利害関係取締役を定足数から外すこと、招集通知1週間前が基本です。
  • 監査役会設置会社は 半数以上が社外監査役、監査等委員会設置会社は 過半数が社外取締役 です。数字と言葉を入れ替えないことが重要です。
  • 少数株主権は、株主提案権の 1%または300個・6か月、招集請求権の 3%・6か月 を役割とセットで覚えます。
  • 自己株式の取得では発行済株式総数は減らず、消却で減ります。株式分割は取締役会寄り、株式併合は特別決議と株式買取請求権が中心です。
  • 剰余金配当は分配可能額と純資産額300万円規制を外せません。社債は株式会社だけの制度ではないことも頻出です。
  • 合同会社は全社員有限責任で、出資は財産出資に限られます。組織再編の入口では、会社分割が包括承継、事業譲渡が個別承継であることを最優先で比較します。

一次試験過去問での出方

2023年度第2回では、第2問で株主総会の招集手続、第3問で自己株式の取得・消却・株式併合、第4問で普通決議と特別決議、第5問で合同会社が問われました。2024年度は、第1問で監査等委員会設置会社、第2問で監査役会、第3問で少数株主権、第4問で剰余金配当、第5問で社債、第6問で定款記載事項、第8問で株式併合・株式分割が連続して出ています。2025年度は、第1問で株主総会、第2問で取締役会、第3問で監査役、第4問で譲渡制限株式、第5問で合同会社、第6問で会社分割と事業譲渡の比較が問われました。近年は、制度名だけでなく、会社類型、人数要件、通知期限、保有期間、決議要件を組み合わせて判断させる出題が中心です。