経営情報システム
標準システムの性能(スループット、レスポンスタイム、キャパシティ等)
性能指標とボトルネックの読み方を扱う。
システムの性能
この章で覚えておきたいこと
- スループット は、単位時間当たりにどれだけ処理できたかを見る指標です。処理件数、トランザクション数、実際のデータ転送量などがここに入ります。
- レスポンスタイム は、要求を出してから応答が返り始めるまでの時間です。利用者の待ち時間に直結します。
- ターンアラウンドタイム は、処理の開始から結果の出力完了までの総時間です。バッチ処理ではこちらが重要です。
- キャパシティ は、システムが処理できる容量や上限です。CPU だけでなく、メモリ、ディスク、ネットワーク、同時接続数なども関係します。
- 帯域幅 は理論上の最大伝送容量、スループット は実際の伝送量です。同じ意味ではありません。
- レイテンシ は遅延時間、ジッタ は遅延時間のばらつき、輻輳 はネットワークの混雑です。
- ボトルネック は、全体性能を最も強く制限している箇所です。速い部品を追加しても、別の箇所が詰まっていれば全体は伸びません。
- 構成変更では、マルチプロセッサ化でスループットが上がりやすい一方、レスポンスタイムが単純比例で改善するとは限りません。デュアルシステムは主に信頼性向上の方式です。
基本知識
性能指標の役割を切り分ける
試験では、似た言葉を入れ替えた選択肢がよく出ます。まずは、何を測っている指標かを整理することが重要です。
- スループット は、単位時間当たりの処理量です。
例として、1 秒当たりの処理件数、1 時間当たりのジョブ完了数、実効データ転送量があります。 - レスポンスタイム は、要求してから応答が返るまでの時間です。
画面操作や検索処理のように、利用者が反応の速さを気にする場面で重視します。 - ターンアラウンドタイム は、投入から結果返却までの全経過時間です。
夜間バッチや帳票出力のように、最終結果がそろうまで待つ処理で重視します。 - キャパシティ は、処理できる量の上限です。
最大同時接続数、保存容量、単位時間当たりの最大処理件数などが該当します。
この切り分けを問われたら、まず 量の話か、時間の話か、上限の話か を見ます。これだけで多くの選択肢を絞れます。
スループットとレスポンスタイムは別の指標です
スループットとレスポンスタイムは、どちらも性能を表しますが、見ている方向が違います。
- スループットは、たくさん処理できるかを見る指標です。
- レスポンスタイムは、すばやく反応できるかを見る指標です。
たとえば、同時に多くの仕事を流せるようにしてスループットが上がっても、個々の利用者が感じる待ち時間まで同じ割合で短くなるとは限りません。逆に、画面応答を速くしても、システム全体の処理件数が大きく増えるとは限りません。
2015 年の過去問では、スループットをレスポンスタイムや部分的な機器性能と混同しないことが問われました。単位時間当たりの処理量 という定義をそのまま押さえることが基本です。
レスポンスタイムとターンアラウンドタイムを混同しない
この 2 つはどちらも時間の指標ですが、終点が違います。
- レスポンスタイムは、応答が返り始めるまでです。
- ターンアラウンドタイムは、結果の出力が完了するまでです。
オンライン処理では、利用者はまず反応の速さを気にするため、レスポンスタイムが重要です。一方で、バッチ処理では処理完了まで待つため、ターンアラウンドタイムが重要になります。
2022 年の過去問では、レスポンスタイムを「結果の出力が終了するまでの時間」としている選択肢が誤りでした。この表現はターンアラウンドタイム寄りです。問題文に「画面に応答が返る」「最初の反応がある」と書かれていればレスポンスタイム、「処理終了」「結果出力完了」と書かれていればターンアラウンドタイムを疑います。
キャパシティとボトルネックで全体性能を見る
キャパシティは、システムがどこまで処理できるかという容量の考え方です。ただし、実際の性能は最も弱い部分に引っ張られます。これが ボトルネック です。
ボトルネックになりやすい箇所には、次のようなものがあります。
- CPU の計算能力
- メモリ不足によるページングやスワップ
- ディスク I/O の待ち
- ネットワーク回線や機器の処理能力
- データベースのロック待ちや非効率な検索
- プリンタなど周辺機器の処理速度
重要なのは、部分性能と全体性能を分けて考えることです。メモリを増設しても、ネットワーク輻輳が原因なら通信の待ち時間は解消しません。CPU を高速化しても、ディスク I/O が詰まっていれば処理完了時間はあまり改善しません。
試験では、「どこが全体を止めているか」を読ませる形で出ます。速い装置を追加する話が出ても、本当に詰まっている箇所に効いているか を確認する必要があります。
帯域幅とスループットは同じではありません
ネットワーク性能では、帯域幅とスループットの違いが頻出です。
- 帯域幅 は、単位時間当たりに伝送可能な理論上の最大容量です。
- スループット は、実際に伝送できた量です。
したがって、帯域幅が大きくても、実際のスループットがその値まで出るとは限りません。スループットが下がる主な理由は次のとおりです。
- 輻輳 が起きている
- パケットロスが発生し、再送が増える
- プロトコル処理のオーバーヘッドがある
- 端末やネットワーク機器の処理能力が足りない
- 無線環境や回線品質が悪い
2023 年第 1 回の過去問では、帯域幅を最大容量、スループットを実際のデータ伝送量として区別できるかが問われました。帯域幅は理論値、スループットは実効値と覚えると整理しやすいです。
レイテンシ、ジッタ、輻輳の意味を押さえる
リアルタイム通信では、転送量だけ見ても品質は判断できません。ここで重要なのが、レイテンシ、ジッタ、輻輳です。
- レイテンシ は、転送要求を出してからデータが届くまでの遅延時間です。
- ジッタ は、遅延時間のばらつきです。
- 輻輳 は、ネットワークが混雑して通信が流れにくくなった状態です。
この 3 つは次のようにイメージすると区別しやすいです。
- レイテンシが大きいと、反応が遅く感じます。
- ジッタが大きいと、音声や映像が途切れたり乱れたりしやすくなります。
- 輻輳が起きると、スループット低下、遅延増加、パケットロスの原因になります。
過去問では、ping 値をレイテンシと混同させる出し方もあります。ping は遅延を測る代表例ですが、一般的な性能用語として空欄に入るのは レイテンシ です。
構成変更による性能向上を過大評価しない
構成を変えれば性能は変わりますが、選択肢では効果を言い過ぎる表現に注意が必要です。
まず、マルチプロセッサ化では複数のプロセッサが同時に処理を進められるため、スループット向上が期待できます。ただし、すべての処理が完全に並列化できるわけではありません。同期、排他制御、通信、処理分割の制約があるため、レスポンスタイムまで単純に半分になるとは限りません。
次に、クライアントサーバや分散処理では役割分担ができますが、通信や連携のオーバーヘッドも増えます。そのため、「常にレスポンスタイムが向上する」「常に信頼性が高くなる」といった断定は危険です。
さらに、デュアルシステムは処理を半分ずつ分担して高速化するための方式ではなく、主に障害時に備えて信頼性を高める方式です。2013 年の過去問でも、デュアルシステムに変更しただけでレスポンスタイムがほぼ半減するという記述は誤りでした。
構成変更の問題では、次の順で考えると整理しやすいです。
- 改善したいのがスループットか、レスポンスタイムか、信頼性かを確認します。
- その構成変更が本当にその指標に効くのかを確認します。
- 並列化の限界や通信オーバーヘッドが無視されていないかを確認します。
この章のまとめ
- スループット は処理量、レスポンスタイム は応答の速さ、ターンアラウンドタイム は処理完了までの総時間です。
- キャパシティ は処理可能な上限であり、実際の全体性能は ボトルネック に制約されます。
- 帯域幅 は理論上の最大容量、スループット は実際の伝送量です。ここを同一視しないことが重要です。
- レイテンシ は遅延時間、ジッタ は遅延のばらつき、輻輳 は混雑です。リアルタイム通信ではまとめて問われやすいです。
- 構成変更の選択肢では、「必ず改善する」「半減する」といった断定を疑います。性能向上には並列化の限界やオーバーヘッドがあるからです。
- 問題を解くときは、まず「量の指標か」「時間の指標か」「上限の指標か」を切り分けると誤答を減らせます。
一次試験過去問での出方
2015 年第 11 問では、スループットを単位時間当たりの処理量として正しく捉えられるかが問われました。レスポンスタイムや個別装置の速さと混同しないことが基本です。
2022 年第 21 問では、スループットとレスポンスタイムの定義に加えて、レスポンスタイムとターンアラウンドタイムの境界が問われました。時間指標の終点を読み分ける力が必要です。
2023 年第 1 回第 13 問では、帯域幅、スループット、レイテンシ、ジッタ、輻輳の対応が問われました。ネットワーク性能を理論値、実効値、遅延、ばらつき、混雑で整理しておくことが有効です。