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経営情報システム

重要

システムの信頼性・経済性(RASIS、稼働率、TCO)

RASIS、稼働率、冗長化、TCOを頻出論点として扱う。

システムの信頼性・経済性

この章で覚えておきたいこと

RASIS、稼働率、直列並列、冗長化、TCOを一枚でつなげて思い出す図解
  • RASIS は、信頼性、可用性、保守性、保全性、安全性の5つでシステムを評価する考え方です。
  • MTBF は平均故障間隔で、長いほど故障しにくいと判断します。
  • MTTR は平均修理時間で、短いほど復旧しやすいと判断します。
  • 稼働率 は、一般に MTBF / (MTBF + MTTR) で求めます。
  • 直列構成は、全部が動いているときだけ全体が動きます。したがって全体の稼働率や信頼度は積で考えます。
  • 並列構成は、どれか1つが動いていれば全体が動きます。したがって全停止確率を先に求めて、1から引きます。
  • 冗長化は可用性を高める代表策ですが、単一障害点や共通原因障害が残ると効果が下がります。
  • フェイルソフトフェイルオーバフォールトトレランスフォールトマスキングフォールバックフールプルーフ は、故障前の予防か、故障後の継続か、安全確保か、切替かで区別します。
  • TCO は導入費だけではなく、運用費、保守費、教育費、移行費、障害対応費まで含めた総保有コストです。

基本知識

RASISと評価の見方

RASISの5観点と、MTBF・MTTR・稼働率で見える範囲を区別する図解

RASISは、情報システムを多面的に評価する代表的な枠組みです。試験では英語の頭文字と日本語の意味を対応づけるだけでなく、与えられた数値からどこまで比較できるかを見抜けるかが問われます。

  • Reliabilityは信頼性です。どれだけ故障しにくいかを表し、主にMTBFで見ます。
  • Availabilityは可用性です。必要なときに使える状態をどれだけ維持できるかを表し、稼働率で見ます。
  • Serviceabilityは保守性です。故障した後にどれだけ速く修理や復旧ができるかを表し、主にMTTRで見ます。
  • Integrityは保全性です。データや処理の完全性、一貫性を保てるかという観点です。
  • Securityは安全性です。不正アクセス、漏えい、改ざんなどへの強さを表します。

ここで重要なのは、MTBFやMTTRだけで比較できるのは信頼性、可用性、保守性までだという点です。保全性や安全性は、故障間隔や修理時間の数値だけでは直接比較できません。2019年の過去問では、まさにこの切り分けが問われました。

MTBF・MTTR・稼働率

MTBF、MTTR、稼働率の違いを数値と場面で比べる図解

MTBFはMean Time Between Failuresの略で、故障から次の故障までの平均時間です。値が長いほど故障しにくく、信頼性が高いと判断します。

MTTRはMean Time To Repairの略で、故障してから復旧するまでの平均時間です。値が短いほど復旧しやすく、保守性が高いと判断します。

可用性を表す稼働率は、一般に次の式で求めます。

  • 稼働率 = MTBF / (MTBF + MTTR)

この式では、MTBFを長くすることでも、MTTRを短くすることでも稼働率を上げられます。したがって、故障しにくいだけでは十分ではありません。復旧が遅いと可用性は下がります。

例えば、AのMTBFが480時間、MTTRが20時間なら、稼働率は 480 / 500 = 0.96 です。BのMTBFが532時間、MTTRが28時間なら、稼働率は 532 / 560 = 0.95 です。この場合、信頼性はBの方が高いですが、可用性はAの方が高いと判断します。試験ではこのように、同じ数値から別の評価軸を読み分けさせる出し方がよくあります。

直列構成と並列構成

直列構成は全部必要、並列構成はどれか一つでよいと読み分ける図解

システム全体の稼働率や信頼度は、機器のつなぎ方で大きく変わります。試験では、まず「全体が動く条件」を日本語で言い換えるのが有効です。

直列構成は、構成要素のすべてが同時に動いているときだけ全体が動く構成です。したがって、全体の稼働率や信頼度は各要素の積で求めます。

  • 装置Aと装置Bが直列なら、全体は a × b です。

並列構成は、複数の要素のうち少なくとも1つが動いていれば全体が動く構成です。このとき、単純に足すのではなく、全要素が同時に止まる確率を求めて1から引きます。

  • 装置Aと装置Bが並列なら、全体は 1 - (1 - a)(1 - b) です。

2024年の過去問では、本回線とバックアップ回線の信頼度が問われました。このとき必要なのは「2本とも使えないときだけ停止する」という読み替えです。a × b は2本とも正常な確率であり、並列構成の全体信頼度ではありません。

2025年の過去問では、同じ稼働率の装置3台を複数の形につないだときの順位比較が問われました。この種の問題では、図を一気に見ずに、まず小さな直列部分や並列部分に分解して順番に計算するとミスしにくくなります。

冗長化と単一障害点

冗長化しても切替装置や共通原因が残ると危ないことを示す図解

冗長化は、同じ役割を持つ機器、回線、電源、データなどを複数用意し、障害時にもサービスを止めにくくする考え方です。代表例は、サーバの二重化、バックアップ回線、電源の二重化、クラスタ構成などです。

ただし、冗長化しただけで自動的に高可用になるわけではありません。試験でも実務でも、次の点を忘れないことが重要です。

  • 切替装置が1つしかなければ、そこが止まると全体が止まります。
  • 電源、ネットワーク機器、データベース、運用手順のどこかに単一障害点があると、冗長化の効果が薄れます。
  • 同じ通信会社、同じ建物、同じ経路に依存すると、共通原因障害で同時停止することがあります。

つまり、冗長化は「台数を増やすこと」ではなく、「止まってはいけない機能を止めにくくする設計」です。2023年と2025年の過去問では、単なる用語暗記ではなく、どう継続するのかを具体的に理解しているかが問われています。

高信頼化設計の用語整理

予防、継続、切替、安全、誤操作防止で用語を切り分ける図解

この論点は取り違えが非常に多いため、故障前か故障後か、何を守るのか、どう継続するのかで整理すると覚えやすくなります。

  • フォールトアボイダンス: 故障そのものを起こりにくくする考え方です。部品品質の向上、設計品質の向上、十分な試験などがこれに当たります。
  • フォールトトレランス: 故障や障害が起きても、システム全体として動作を継続できるようにする考え方です。冗長化や耐障害設計が中心です。
  • フォールトマスキング: 冗長化や多数決などによって故障の影響を外部から見えにくくする考え方です。障害を吸収して、利用者から見た結果を正常に保ちます。
  • フェイルソフト: 障害時に機能や性能を一部落としてでも、重要機能は継続する考え方です。全面停止を避けるための縮退運転です。
  • フェイルオーバ: 主系に障害が起きたとき、待機系へ処理を引き継いで継続する考え方です。切替が核心です。
  • フォールバック: 障害時に代替手段や簡易モードへ戻し、影響を抑えながら運用を続ける考え方です。
  • フェイルセーフ: 異常時に危険側ではなく安全側へ移行する考え方です。継続運転より安全確保が主眼です。
  • フールプルーフ: 利用者が誤操作しても危険や異常につながりにくいようにする考え方です。誤操作防止が中心です。

試験で特に混同しやすい組み合わせは次のとおりです。

  • フェイルソフトフェイルオーバ
    • フェイルソフトは機能を落として継続します。
    • フェイルオーバは待機系へ切り替えて継続します。
  • フォールトアボイダンスフォールトトレランス
    • フォールトアボイダンスは故障前の予防です。
    • フォールトトレランスは故障後も耐えて動かす考え方です。
  • フォールトトレランスフォールトマスキング
    • フォールトトレランスは障害があっても継続できることに重点があります。
    • フォールトマスキングは障害の影響を外へ見せないことに重点があります。
  • フェイルセーフフールプルーフ
    • フェイルセーフは異常時に安全側へ移す考え方です。
    • フールプルーフはそもそも誤操作しにくくする考え方です。

2023年、2021年、2025年の過去問では、この違いが繰り返し問われています。用語だけを丸暗記するより、「障害時に何が起きる設計か」をイメージできるようにしておく方が強いです。

TCOと経済性の考え方

導入費だけでなく運用費、保守費、教育費、停止損失まで含めて考える図解

TCOはTotal Cost of Ownershipの略で、システムを導入して終わりではなく、使い続けるために必要な費用全体で判断する考え方です。

TCOに含める代表的な費用は次のとおりです。

  • ハードウェア、ソフトウェア、クラウド利用料などの導入費
  • 保守契約費、監視費、バックアップ費などの運用費
  • 障害対応費、復旧作業費、部品交換費などの保守費
  • 教育費、移行費、データ整備費
  • 更新費、廃棄費
  • システム停止による業務損失

中小企業では、初期費用の安さだけで導入判断をしがちですが、障害が多い、復旧に時間がかかる、運用が属人化する、といった状態ではTCOが高くなります。つまり、信頼性と経済性は別々ではなく、停止損失も含めて一緒に考える必要があります。

この章のまとめ

稼働率、構成図、冗長化、用語整理、TCOの最終確認ポイントをまとめた図解
  • RASISでは、MTBFで主に信頼性を、MTTRで主に保守性を見ます。可用性はその両方から計算します。
  • 稼働率の問題では、まず何が分母で何が分子かを確認します。MTBFとMTTRなら MTBF / (MTBF + MTTR)、構成図なら全体が動く条件を日本語で言い換えてから式にします。
  • 直列構成は積、並列構成は全停止確率の補集合です。並列で単純加算しないことが重要です。
  • 冗長化は可用性向上の基本策ですが、単一障害点や共通原因障害を見落とすと得点しにくくなります。
  • 用語問題では、故障前の予防か、故障後の継続か、安全確保か、待機系切替か、誤操作防止かで切り分けると判断しやすいです。
  • TCOは導入費ではなく総保有コストです。安く買えることと、長期的に安く使えることは同じではありません。
  • ひっかけとして多いのは、MTBFが長いから可用性も高いと思い込むこと、フェイルソフトとフェイルオーバを入れ替えること、フォールトアボイダンスとフォールトトレランスを混同することです。

一次試験過去問での出方

2019年はRASISとMTBF・MTTRの対応関係から可用性を計算させ、2024年と2025年は回線や装置の直列・並列構成から全体信頼度や稼働率を求めさせる形で出題されました。計算問題では、式を暗記するより「全部動く必要があるのか」「どれか1つでよいのか」を先に言い換えることが重要です。

2023年、2021年、2025年、2015年は高信頼化設計の用語問題が中心で、フールプルーフ、フェイルソフト、フェイルオーバ、フォールトアボイダンス、フォールトトレランス、フォールトマスキング、フォールバックの違いが繰り返し問われています。似た言葉を雰囲気で覚えず、故障前か故障後か、切替か縮退か、安全確保かで整理しておくと対応しやすいです。