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契約の類型と内容

この章で覚えておきたいこと

契約類型を何を移転し何を守るかで見分ける図解

基本知識

売買契約と取引基本契約

売買契約の契約不適合責任と検査通知義務の図解

売買契約は、売主が目的物を移転し、買主が代金を支払う契約です。企業間取引では、個別注文のたびにゼロから条件を定めるのではなく、継続取引の前提として取引基本契約を置くことが多くなります。試験では、個々の条項名と法的効果を結び付けられるかが問われます。

取引基本契約で押さえるべき条項は次のとおりです。

2012年の過去問では、期限の利益喪失 が問われました。所有権留保は「目的物を返してもらう」条項、解除条項は「取引を終わらせる」条項、出荷停止条項は「これ以上渡さない」条項です。これに対し期限の利益喪失は、未到来債権まで一括請求できる 点が核心です。

売買の契約不適合責任では、目的物が契約内容に適合しない場合に、買主は追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除を検討できます。追完の方法には修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しがあります。ただし、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるときは、買主は追完請求をできません。

また、買主が代替物の引渡しを求めても、売主は、買主に不相当な負担を課さない範囲 で別の方法による追完をすることができます。2021年の過去問では、買主が新品への交換を求めても、修理で足り、しかも買主に不相当な負担を課さないなら、売主は修理による追完を主張できることが問われました。

さらに、商人間売買では商法第526条の検査・通知義務が重要です。商人間の売買では、買主は受領後遅滞なく検査し、直ちに発見できる不適合があれば通知しなければなりません。直ちに発見できない不適合でも、受領後6か月以内に発見 したときは 発見後直ちに通知 しなければ、売主が悪意でない限り請求が困難になります。2021年の過去問では、この 6か月ルール と「商人間売買かどうか」がそのまま聞かれました。

| 商法526条の場面 | 買主の対応 | 通知しない場合 | |---|---|---| | 受領後 | 遅滞なく検査する | 検査義務違反が問題になる | | 直ちに発見できる不適合 | 直ちに通知する | 契約不適合を理由とする請求が制限される | | 直ちに発見できない不適合 | 受領後6か月以内に発見し、発見後直ちに通知する | 売主が悪意でない限り請求が困難になる | | 売主が悪意 | 例外的に買主保護が残る | 「6か月経過で常に不可」とはしない |

秘密保持契約

秘密保持契約の秘密情報の定義と除外事由の図解

秘密保持契約は、技術情報、営業情報、顧客情報、価格条件、研究計画などの秘密情報を守るための契約です。試験では、秘密情報に何が含まれるかよりも、契約上どのように秘密情報を定義しているか、そして 何が除外されるか を読めるかが重要です。

秘密情報の定義では、開示方法ごとに要件が違うことがあります。

2018年の過去問では、書面開示と口頭開示で扱いが違うことが問われました。口頭情報は「その場で秘密だと言えば必ず秘密情報になる」わけではなく、後日の書面通知まで必要なことがあります。

秘密情報から除外される典型例も頻出です。

2018年の過去問では、提示条項に書かれていない除外事由を選ばせる問題が出ました。NDAの問題は一般論で解くのではなく、条文に書いてあるものと書いていないものを分ける のが安全です。

秘密保持契約では、定義と除外事由に加えて、目的外使用禁止、第三者開示禁止、複製制限、返還・廃棄、存続期間も主要条項です。共同研究やM&Aの初期段階では、まずNDAを結んで情報開示の土台を作ることが多いため、この論点は他の契約類型ともつながります。

共同研究開発契約とシステム開発契約

共同研究開発契約の成果帰属とシステム開発契約の請負準委任の図解

共同研究開発契約は、複数の企業や研究機関が共同で研究開発を行う契約です。ポイントは、研究そのものよりも、成果を誰に帰属させ、誰がどう使えるか を明確にしておくことです。

主要条項は次のとおりです。

この契約で特に重要なのが競業避止です。研究成果やノウハウを守るために一定の制限を置くこと自体はありますが、契約終了後まで広く競合研究を禁止する条項 は、共同研究の必要範囲を超えると 独占禁止法上の問題 になり得ます。2015年の過去問では、この終了後存続型の競業避止条項の根拠法として独占禁止法を選ばせました。

共同研究開発は、協力関係を作る契約である一方、競争事業者同士の結び付きでもあります。そのため、次のような条項は試験でリスクを意識します。

2016年の過去問では、情報システム開発契約における 請負 と 準委任 の違いも問われました。これは共同研究開発契約とは別類型ですが、「成果物の完成義務があるか」という契約類型の見分け方を確認する重要論点です。

要件定義やシステム化計画のように、発注者自身も成果物を具体化できていない段階は、一般に請負になじみにくく、準委任が選ばれやすくなります。逆に、仕様が固まっていて完成物を明確に定められる段階では請負が選ばれやすくなります。

販売店契約・代理店契約・フランチャイズ契約

販売店契約と代理店契約とフランチャイズ契約の違いの図解

販売店契約と代理店契約は似て見えますが、法律関係が異なります。

この違いは、報酬の性質にも表れます。販売店は転売差益を得るのに対し、代理店は手数料を受け取るのが基本です。試験で迷ったときは、誰が顧客との契約当事者になるか を確認します。

販売店契約では、販売地域、販売目標、商標使用、返品、契約解除、競合商品の取扱いなどが主要条項です。このうち、再販売価格の拘束や過度な取引先制限は、独占禁止法上の問題と結びつくことがあります。診断士試験では細かな公取委ガイドラインまで深追いするより、販売政策の名目でも競争制限になり得る という感覚を持つことが大切です。

フランチャイズ契約では、本部が加盟店に対して商標、商号、ノウハウ、営業方式を使わせ、加盟店が加盟金やロイヤルティを支払います。主要条項は次のとおりです。

2012年の過去問では、フランチャイズ契約について次の点が問われました。

フランチャイズ契約は、ブランド維持のために本部の統制が必要な契約ですが、その統制が広すぎると競争制限や優越的地位濫用の問題に近づきます。したがって、「本部の指示なら何でも有効」と考えないことが大切です。

事業提携契約と合弁契約

合弁契約の先買権プットオプションコールオプションの図解

事業提携契約は、販売、生産、物流、海外展開などで複数企業が協力する契約です。その中でも、共同出資会社を作って事業を行う形が合弁契約です。合弁契約では、出資比率だけでなく、統治と退出の仕組みをどう作るかが重要になります。

合弁契約の主要条項は次のとおりです。

2014年の過去問では、合弁契約の条項名がそのまま問われました。

この分野のひっかけは、条項名そのものではなく、誰が誰の株式を買うのか を逆に読ませる点にあります。問題文で「自分の株式を相手に買い取らせる」ならプット・オプション、「相手の株式を自分が買い取る」ならコール・オプションです。

また、合弁では意見対立によって経営が止まる デッドロック が起こり得ます。そのため、一定期間協議しても解決しない場合の買取り、第三者売却、解散などを契約で定めておくことがあります。これは出資比率の論点ではなく、事業を止めないための退出ルール だと理解します。

M&A契約

M&A契約の表明保証からクロージングと補償までの時間軸の図解

M&A契約、特に株式譲渡契約は、物の売買とは違って、対象会社の財務、法務、労務、税務、契約関係、許認可などに関するリスクを契約条項で細かく分担します。そのため、英米法系の契約実務で発達した概念が多く登場します。

2013年の過去問では、M&A契約で頻出の基本用語がまとめて問われました。重要語は次のとおりです。

ここで最重要なのが、クロージング前とクロージング後で救済が変わる ことです。

- 取引実行の拒否 - 契約解除 - 条件成就の欠如を理由とするクロージング見送り

- すでに取引自体は完了しているため、補償請求が中心 - 必要に応じて損害賠償や価格調整が問題になる

この違いを理解すると、問題文に「契約締結後」「クロージング前」「クロージング後」という時間軸が出たときに正答しやすくなります。M&A契約の論点は、単語暗記だけでは足りず、時間軸に沿ったリスク配分 として理解することが大切です。

この章のまとめ

契約類型ごとの目的主要条項リスク時間軸を確認する図解

一次試験過去問での出方

2012年 第15問ではフランチャイズ契約の情報開示義務、契約終了後の名称使用、競業避止、消費者契約法の適用関係が問われました。

2012年 第19問 設問2では取引基本契約の期限の利益喪失条項の効果が問われ、未到来債権の一括請求が論点になりました。

2013年 第2問 設問1・2ではM&A契約の表明・保証、誓約、クロージング、補償、英米法系契約実務の発想が問われました。

2014年 第2問 設問1では合弁契約の先買権とプット・オプションが条項文から問われました。

2015年 第16問 設問2では共同研究開発契約終了後の競業避止条項と独占禁止法の関係が問われました。

2016年 第16問ではシステム開発契約における請負と準委任の違い、契約不適合責任と債務不履行責任の切り分けが問われました。

2018年 第15問 設問1・2では秘密保持契約の秘密情報の定義と除外事由が英文条項から問われました。

2021年 第20問 設問1・2では売買の契約不適合責任、売主による代替的追完、商人間売買の検査・通知義務が問われました。

引用元