中小企業経営・中小企業政策
最優先財務サポート(税制優遇、事業承継税制、補助金等)
事業承継税制、贈与税・相続税、特例措置、税制優遇、補助金の要件を扱う。
財務サポート
この章で覚えておきたいこと
- このテーマは、まず 税制優遇 と 補助金 を分けて考えることが重要です。税制優遇は税額控除、損金算入、納税猶予のどれかで整理し、補助金は補助率や申請類型で整理します。
- 中小企業向け賃上げ促進税制 は、法人税額または所得税額から控除する制度です。 1.5% 、 2.5% 、 15% 、 30% 、 10%上乗せ 、 5%上乗せ を制度名と一対で覚えます。
- 中小法人等に対する法人税率の軽減措置 は、税法上の基準で 資本金または出資金の額が1億円以下 の法人などが対象です。中小企業基本法の業種別基準とは別物です。
- 交際費等の損金算入の特例 は、800万円までの全額損金算入 と 接待飲食費の50%損金算入 を対で覚えます。
- 先端設備等導入計画 は、市町村(特別区を含む) が認定主体です。 労働生産性 年平均3%以上向上 と計算式まで暗記対象です。
- デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金) は、通常枠、インボイス枠、セキュリティ対策推進枠、複数者連携デジタル化・AI導入枠へ整理し直します。直近の過去問で頻出なのは 通常枠2分の1以内 と、旧制度名で出ていた 10者以上 です。
- 事業承継税制 は、贈与税・相続税 の納税猶予制度です。 対象株式数上限撤廃 、 納税猶予100% 、 最大3人 をまとめて覚えます。
基本知識
税制優遇と補助金は入口で切り分ける
中小企業向け「賃上げ促進税制」は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
本事業は、中小企業・小規模事業者等の取引のデジタル化による労働生産性向上及びインボイス制度への対応を促進するために、取引関係における発注者の費用負担によって導入されるITツールの費用の一部を補助するものです。
出典:
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html
https://www.it-hojo.jp/r04/doc/pdf/r4_application_guidelines_shoryu.pdf
税制優遇は、税負担を軽くする制度です。補助金は、採択後に補助対象経費の一部が支給される制度です。試験では、次の3つに分けて読むと整理しやすいです。
- 税額控除: 法人税額または所得税額から直接差し引くものです。中小企業向け賃上げ促進税制が代表です。
- 損金算入: 法人税の課税所得を計算するときに費用として認めるものです。交際費等の損金算入の特例が代表です。
- 納税猶予: 直ちに納税せず、一定の要件の下で猶予されるものです。事業承継税制が代表です。
補助金は、税金を軽くする制度ではありません。申請、採択、交付決定、事業実施、実績報告を経て支給されるため、原則として後払いです。したがって、選択肢で「補助金なのに税額控除の説明になっている」「税制なのに補助率の話になっている」ときは誤りだと判断できます。
中小企業向け賃上げ促進税制
中小企業向け賃上げ促進税制は、中小企業者等が、前年度より給与等を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
① 1.5%以上増加 していること 又は ② 2.5%以上増加 していること を法人税額又は所得税額から控除
① 15% 又は ② 30%
【上乗せ①教育訓練】 +10%控除
【上乗せ②子育てとの両立・女性活躍支援】 +5%控除
出典:
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin06gudebook.pdf
この制度は、税額控除 である点が最重要です。損金算入ではありません。したがって、まず 1.5%で15%控除 、 2.5%で30%控除 を即答できるようにします。
次に、上乗せ要件を固定します。
- 教育訓練費増加要件 を満たすと、税額控除率が 10%上乗せ されます。
- 子育てとの両立支援または女性活躍支援要件 を満たすと、税額控除率が 5%上乗せ されます。
過去問では、「教育訓練費」を外して設備投資や新規採用費に置き換えるひっかけが出やすいです。暗記は次の形で行うと崩れません。
- 1.5% → 15%
- 2.5% → 30%
- 教育訓練費 → 10%上乗せ
- 子育て・女性活躍 → 5%上乗せ
中小法人等の法人税率軽減措置と交際費等の特例
中小法人等に対しては軽減税率の特例措置(所得金額のうち年800万円以下の金額に対する税率:19%→15%)が適用されます。
資本金の額が1億円以下の普通法人などは、中小企業向けの各措置(法人税の軽減税率の特例措置や、支出した交際費等の額のうち一定の金額を損金の額に算入することができる特例措置等)を適用することができます。
中小法人については、接待飲食費の額の50%相当額の損金算入と交際費等の額のうち年800万円(定額控除限度額)までの損金算入を選択適用できます。
出典:
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2025/pdf/f02-01.pdf
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2022/pdf/03.pdf
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/settai_faq/01.htm
この論点では、税法上の資本金基準 をそのまま暗記します。中小企業基本法の定義とは別物です。判定軸は次の3つだけで十分です。
- 資本金または出資金の額が1億円以下
- 年所得800万円以下の部分
- 軽減税率は 15%
交際費等の特例は、次の2択を混同しないことが得点差になります。
- 800万円までの全額損金算入
- 接待飲食費の50%損金算入
この2つは、同時適用ではなく 選択適用 です。空欄補充や正誤判定では、次が狙われやすいです。
- 800万円 を 500万円や1,000万円に変える
- 15% を 19% と入れ替える
- 資本金1億円以下 を 2億円以下などに変える
- 800万円枠を 50%損金算入 と誤らせる
先端設備等導入計画
第五十二条 同意導入促進基本計画に基づく先端設備等の導入をしようとする中小企業者は、その実施しようとする先端設備等導入に関する計画を作成し、経済産業省令で定めるところにより、その導入する先端設備等の所在地を管轄する特定市町村に提出して、その認定を受けることができる。
4 特定市町村は、第一項の認定の申請があった場合において、その先端設備等導入計画が次の各号のいずれにも適合すると認めるときは、その認定をするものとする。
一 基本方針及び当該特定市町村の同意導入促進基本計画に適合するものであること。
二 当該先端設備等導入計画に係る先端設備等導入が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。計画期間において、基準年度比で労働生産性が年平均3%以上向上すること
(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量
出典:
https://elaws.jp/view/411AC0000000018
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/kotei_shisan.html
先端設備等導入計画は、誰が認定するか と どの数字が要件か をそのまま覚える論点です。
- 認定主体は 市町村(特別区を含む)
- 要件は 労働生産性 年平均3%以上向上
- 計算式は (営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量
試験では、認定主体を国や都道府県に変えるひっかけが出ます。ここは 特定市町村に提出して認定 と条文どおりに覚えます。
また、税制面では固定資産税の特例と一緒に問われやすいです。したがって、暗記は次の形で十分です。
- 市町村認定
- 年平均3%以上
- 営業利益+人件費+減価償却費
デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)
デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。
補助金申請者(中小企業・小規模事業者等のみなさま)は、デジタル化・AI導入補助金事務局に登録されたIT導入支援事業者とパートナーシップを組んで申請することが必要となります。※複数者連携デジタル化・AI導入枠を除きます。
通常枠
補助率 1/2以内、2/3以内5万円以上150万円未満
150万円以上450万円以下
複数者連携デジタル化・AI導入枠
補助対象者
商工団体等、まちづくり会社・DMO等、複数の中小企業・小規模事業者等により形成されるコンソーシアム出典:
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/digitalbased_multiple_companies/
現在の正式名称は デジタル化・AI導入補助金 です。したがって、今後の学習では新名称で覚えます。ただし、過去問では IT導入補助金 の名称で出ているので、旧称も切り離さず残します。
最新制度でまず覚えるべきことは次の3つです。
- 制度名は デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)
- 目的は 労働生産性の向上 と 業務効率化・DX
- 申請は原則 IT導入支援事業者 と組んで行う
そのうえで、試験対策として数字を2段で整理します。
- 最新制度で先に覚える数字
- 通常枠 1/2以内
- 一定の賃金要件を満たす場合 2/3以内
- 補助額は 5万円以上150万円未満 と 150万円以上450万円以下
- 過去問で頻出の旧称ベース論点
- 通常枠2分の1以内
- 10者以上
- 会計・受発注・決済・EC
ここでの重要な変更点は、旧来の「複数社連携枠」を単純に 10者以上 とだけ覚えるのでは足りず、現在は 複数者連携デジタル化・AI導入枠 という名称になり、対象者も 商工団体等、まちづくり会社・DMO等、コンソーシアム へ広がっていることです。
したがって、暗記の優先順位は次のとおりです。
- 現在の名称は デジタル化・AI導入補助金
- 現在の通常枠は 1/2以内 が基本
- 過去問では旧称 IT導入補助金、かつ 10者以上 の論点が出る
正誤判定では次を落とさないことが重要です。
- 現在の制度名を IT導入補助金だけ と断定する
- 現在の通常枠を一律 3分の2以内 とする
- 旧過去問論点の 10者以上 を、そのまま現在制度の全体要件だと誤読する
- IT導入支援事業者 の関与を落とす
事業承継税制
法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
対象株式数の上限を撤廃し、猶予割合を**100%**に拡大することで、承継する株式にかかる贈与税・相続税のすべてが納税猶予の対象となりました。
これまでは、先代経営者一人から後継者一人への贈与・相続のみが対象でしたが、特例措置では、親族外を含むすべての株主から、代表者である後継者(最大3人)への贈与・相続が対象になりました。
事業承継税制(特例)の適用を受けるためには、平成30年4月1日から令和9年9月30日までに特例承継計画を都道府県庁に提出し、確認を受ける必要があります。
個人事業者の事業承継を促進するため、10年間限定で、多様な事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予する「個人版事業承継税制」が創設されました。
出典:
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/houjin.htm
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu_zouyo_souzoku.html
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_kojin_ninntei.html
事業承継税制は、税率軽減 ではなく 納税猶予 です。ここで覚えるべき語句ははっきりしています。
- 税目は 贈与税・相続税
- 法人版の対象は 非上場株式等
- 個人版の対象は 事業用資産
- 特例措置では 対象株式数上限撤廃
- 猶予割合は 100%
- 後継者は 最大3人
- 入口の計画名は 特例承継計画
この論点は名称の似た計画を混ぜる問題が多いです。したがって、経営発達支援計画 や 経営改善計画 ではなく、特例承継計画 と固定して覚えます。
この章のまとめ
- 賃上げ促進税制は、法人税額または所得税額から控除 する制度です。教育訓練費増加要件が上乗せ論点になります。
- 中小法人等の法人税率軽減措置は、資本金または出資金の額が1億円以下、年所得800万円以下の部分、15% をセットで覚えます。
- 交際費等の特例は、800万円まで全額 と 接待飲食費50% を区別します。
- 先端設備等導入計画は、市町村認定、年平均3%以上向上、(営業利益+人件費+減価償却費)÷労働投入量 が最重要です。
- デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金)は、現在の正式名称 と 過去問での旧称 をセットで覚えます。数字はまず 通常枠1/2以内、過去問対策として 10者以上 を残します。
- 事業承継税制は、贈与税・相続税、法人版は非上場株式等、個人版は事業用資産 を対応づけて覚えます。
- 特例措置では、特例承継計画、全株式対象、納税猶予100%、最大3人 がひっかけ回避の軸になります。
- 税制と補助金は同じ「支援策」でも判定軸が違います。税制は税目と計算構造、補助金は補助率と申請類型で整理すると崩れにくいです。
一次試験過去問での出方
2025年は、このテーマの重要論点がまとまって出題されました。第24問で賃上げ促進税制の控除対象と控除率、第27問で交際費等の損金算入特例、第30問で事業承継税制の税目と特例措置が問われています。直近年度では、制度名だけでなく数字まで答えさせる傾向が明確です。
2023_1年は、第24問で先端設備等導入計画の認定主体と労働生産性の式、第25問で旧称の IT導入補助金 の補助率と連携要件、第26問で中小法人等の法人税率軽減措置、第27問で法人版事業承継税制の特例承継計画と特例措置の拡充内容が出題されました。制度の比較問題として非常に学びやすい年度です。
2022年は、第19問で賃上げ促進税制の教育訓練費増加要件、第25問で交際費等の損金算入特例が問われました。2025年の出題とつながるので、古い問題ではなく直近反復論点として復習する価値があります。
この分野は、条文暗記だけでなく、税額控除か、損金算入か、納税猶予か を見抜く力が問われます。過去問演習では、制度名と数字を一対で声に出して確認すると定着しやすいです。