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資本市場理論

この章で覚えておきたいこと

資本市場理論で最初に覚えるCAPM・ベータ・SMLとCML・効率的市場仮説の要点を示す図解

基本知識

CAPMの基本式と市場リスクプレミアム

CAPMの期待収益率が無リスク利子率と市場リスクプレミアムから決まることを示す図解

CAPMは、ある証券やポートフォリオの期待収益率が、無リスク利子率と市場リスクに対する見返りで決まると考える理論です。基本式は次のとおりです。

E(Ri) = Rf + βi {E(Rm) - Rf}

ここで、E(Ri) は証券iの期待収益率、Rf は無リスク利子率、βi はベータ、E(Rm) は市場ポートフォリオの期待収益率です。E(Rm) - Rf が 市場リスクプレミアム です。

この式で重要なのは、ベータを掛ける相手が 市場ポートフォリオの期待収益率そのものではなく、市場リスクプレミアム であることです。2016年や2017年の計算問題では、この引き算を飛ばして誤答に誘う形が典型です。

たとえば、無リスク利子率が3%、市場ポートフォリオの期待収益率が8%、ベータが1.4なら、期待収益率は 3% + 1.4 × (8% - 3%) = 10% です。与件に税率が混ざっていても、CAPMで株主資本コストや期待収益率を求めるだけなら通常は使いません。

逆算問題も頻出です。期待収益率が10%、市場ポートフォリオの期待収益率が6%、無リスク利子率が1%であれば、市場リスクプレミアムは5%なので、β = (10% - 1%) / 5% = 1.8 と求めます。式を一度書いてから数値を入れると、2017年問20型の逆算でも崩れにくくなります。

ベータとシステマティックリスク

ベータが市場全体への感応度でありシステマティックリスクを表すことを示す図解

ベータは、個別証券の収益率が市場全体の変動に対してどの程度反応するかを示す係数です。したがって、ベータが測っているのは システマティックリスク、つまり 分散投資しても消えない市場全体に共通するリスク です。

ここでいうシステマティックリスクは、企業固有の事故や不祥事のような個別要因ではありません。市場全体の景気変動、金利変動、投資家心理の変化などに連動する部分です。2014年問21や2013年問21では、この意味をアンシステマティックリスクや流動性リスク、信用リスクと区別できるかが問われました。

ベータの読み方は次のように整理できます。

重要なのは、ベータが大きいほど総リスクが必ず大きいとまでは言えないことです。ベータは市場要因への感応度であって、個別要因まで含めた全変動の大きさそのものではありません。2016年問12では、この混同を避けられるかが問われています。

ベータの計算方法

ベータを共分散と市場分散または相関係数と標準偏差比から計算する図解

ベータは定義上、次の式で表せます。

βi = Cov(Ri, Rm) / Var(Rm)

つまり、個別証券と市場ポートフォリオの 共分散 を、市場ポートフォリオの 分散 で割ったものです。2009年問18のように共分散データが与えられた問題では、この定義をそのまま使います。

また、相関係数と標準偏差が与えられる場合は、次の式に変形できます。

βi = 相関係数 × (個別証券の標準偏差 / 市場ポートフォリオの標準偏差)

2014年問18はこの形の典型で、相関係数だけを見て0.4と答えると誤ります。相関係数に加えて、個別証券と市場の標準偏差の比を掛ける必要があります。

試験では、次の誤りが非常に多いです。

証券市場線と資本市場線の違い

証券市場線と資本市場線の横軸と対象範囲の違いを示す図解

CAPMの頻出論点は、証券市場線 と 資本市場線 の違いです。2020年問22、2024年問19では、この違いを図や空欄補充で正確に読めるかが問われました。

まず、証券市場線は、CAPMの式をグラフにしたものです。横軸に ベータ、縦軸に 期待収益率 をとります。切片は無リスク利子率、傾きは市場リスクプレミアムです。均衡状態では、個別証券もポートフォリオも、ベータで測れる限りこの線上で評価されます。

実際の期待収益率が証券市場線から外れているときは、割安・割高の判定に使います。

これに対して資本市場線は、無リスク資産と市場ポートフォリオを組み合わせた 効率的ポートフォリオ について、横軸に 標準偏差、縦軸に 期待収益率 をとった関係です。したがって、資本市場線の対象は「効率的ポートフォリオに限定される」という点が本質です。

両者の違いを一気に整理すると次のとおりです。

2024年問19では、図の中で無リスク利子率の点、投資家の最適保有ポートフォリオの点、市場ポートフォリオの点を読み分けたうえで、保有ポートフォリオのリスクプレミアムが「無リスク利子率からその保有ポートフォリオまでの期待収益率の差」であることを判断させています。図問題では、まず横軸が標準偏差かベータかを確認することが最優先です。

市場モデルとCAPMの関係

市場モデルは過去データの回帰でCAPMは期待収益率の均衡理論であることを示す図解

市場モデルは、個別証券の収益率を市場指数の収益率で説明する実証モデルです。代表的な形は次のとおりです。

Ri = α + βRm + e

ここで、α は市場要因だけでは説明できない平均的なずれ、β は市場に対する感応度、e は個別要因による誤差項です。2010年問17(2)では、TOPIXの変化率と自社株式収益率の回帰式から、このモデルが インデックス・モデル であることを判定させました。

市場モデルとCAPMは似た記号を使いますが、役割が異なります。

CAPMでもベータ推計のために回帰分析を使うことがありますが、α + βRm + e という形の式そのものは市場モデルの文脈です。この違いを曖昧にすると、2010年問17(2)のような識別問題で落としやすくなります。

また、市場モデルの e は個別要因による変動なので、分散投資で小さくしやすい アンシステマティックリスク に対応します。一方、βRm の部分は市場全体に連動するため、分散投資しても消えにくい システマティックリスク に対応します。この切り分けは、ベータの意味理解にも直結します。

効率的市場仮説の形式区分

効率的市場仮説の弱形式・セミストロング型・強形式と価格反応を示す図解

効率的市場仮説は、利用可能な情報がすばやく市場価格へ反映されるという考え方です。2014年問14、2018年問20、2020年問18、2023年問19では、定義そのものと、そこから導かれる価格反応の形が問われています。

形式区分は次のように整理します。

したがって、2023年問19の正解は「市場価格は公に入手可能な情報を反映する」です。インサイダー情報まで織り込むのは強形式であり、セミストロング型ではありません。

効率的市場仮説で誤りやすい点も整理しておきます。

2020年問18では、業績改善の新情報が t = 0 で市場に流れたとき、合理的な投資家が行動するなら 超過収益率はその時点で一度だけ反応し、その後に規則的な超過収益が続くわけではない という読み方が必要でした。ここは「情報が出た後もしばらく勝ち続けられる」と誤解しやすい論点です。

この章のまとめ

資本市場理論の章末確認としてCAPM計算・ベータ計算・SMLとCML・市場モデル・効率的市場仮説を整理する図解

一次試験過去問での出方

2024年問19では、資本市場線の図から無リスク利子率、投資家の最適保有ポートフォリオ、市場ポートフォリオを読み分けて、保有ポートフォリオのリスクプレミアムを判定させました。資本市場線は横軸が標準偏差で、対象が効率的ポートフォリオに限られる点が核心です。

2023年問19、2018年問20、2014年問14、2020年問18では、効率的市場仮説の形式区分と意味が繰り返し問われています。特にセミストロング型は公開情報を反映する形であり、価格不変や完全予測を意味しません。新情報が出たときの超過収益率は、その時点で一度反応するという理解も重要です。

2020年問22では、資本市場線と証券市場線の違いを空欄補充で問いました。資本市場線は無リスク資産と市場ポートフォリオの組み合わせによる効率的ポートフォリオの関係、証券市場線は個別証券を含む資産一般の期待収益率とベータの関係です。

2017年問20、2016年問12(2)、2007年問14では、CAPMの計算が出題されています。市場リスクプレミアムを先に計算してから期待収益率やベータを求めるのが基本で、税率などの不要情報に引きずられないことが大切です。

2015年問18、2016年問12(1)では、β=1の資産の期待収益率は市場ポートフォリオの期待収益率に一致すること、市場ポートフォリオはすべての投資家が危険資産部分として保有する均衡ポートフォリオであることなど、CAPMの概念整理が問われました。

2014年問18、2009年問18ではベータの計算が、2014年問21、2013年問21ではベータとシステマティックリスクの意味が問われました。ベータは市場全体との連動度であり、分散投資で消えないリスクを表す点が頻出です。

2010年問17(2)では、TOPIXと個別株式収益率の回帰式から市場モデルを識別させました。α + βRm + e の形は市場モデルであり、CAPMそのものではないと切り分ける必要があります。