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貸借対照表

この章で覚えておきたいこと

貸借対照表で最初に押さえる分類、評価、純資産への影響を整理する図解

基本知識

貸借対照表は「分類」「評価」「純資産の動き」で読む

貸借対照表を分類、評価、純資産への影響の3段階で読む視点の図解

貸借対照表では、科目名を暗記するだけでは足りません。一次試験では、次の3段階で読めるかどうかがよく問われます。

たとえば、固定資産の減価償却は資産の帳簿価額を減らすだけでなく、費用計上を通じて利益を減らし、最終的には純資産も減らします。反対に、増資は利益を通さずに純資産を増やします。こうしたつながりを意識すると、仕訳問題と財務諸表問題を一体で解けるようになります。

流動資産と固定資産の分類は営業循環基準と1年基準で決める

営業循環基準と1年基準で流動と固定を分類する考え方の図解

資産と負債の流動・固定の区分は、見た目の短期・長期だけでなく、基準に沿って判断します。

この論点では、2024年の金銭債権・金銭債務の問題のように、勘定科目の使い分けがそのまま表示区分の判断につながります。特に次の区別は頻出です。

名称が似ている科目ほど、営業取引かどうか、役務提供が継続契約かどうかを確認すると切り分けやすくなります。

棚卸資産は数量の論点と価額の論点を分けて考える

棚卸減耗損と商品評価損を数量差と価額下落で分ける図解

棚卸資産は、貸借対照表の中でも出題回数が非常に多い論点です。一次試験では、次の順番で考えると安定します。

1. まず いくつ残っているか を確定します。 2. 次に 1個いくらで評価するか を決めます。 3. 最後に、売上原価や利益への影響を確認します。

棚卸資産で特に重要なのは、次の2つを分けることです。

2023年度第2回の問題では、帳簿数量320個、実地数量290個というズレから棚卸減耗損を出し、そのうえで残った290個にだけ商品評価損をかけることが問われました。2020年の問題でも、実地数量で数量を確定し、A商品だけ低価法で評価減する流れが出ています。したがって、棚卸資産では次の判断軸を必ず持っておきます。

さらに、取得原価の決定方法も押さえておく必要があります。2016年には先入先出法で売上原価を求める問題が出ています。先入先出法、総平均法、移動平均法などの違いは損益計算書の論点にも見えますが、期末棚卸高という貸借対照表の金額を決める論点でもあります。

固定資産は取得原価、減価償却、売却時簿価まで一連で押さえる

固定資産の取得原価、減価償却、帳簿価額、売却損益を一連で追う図解

有形固定資産では、取得した時点で終わりではなく、使用期間を通じて費用配分するところまで問われます。基本は次の流れです。

2018年の建物売却の問題では、取得原価800,000千円を耐用年数20年で定額償却し、売却日までの月割償却をしたうえで売却損を出しました。2023年度第2回の圧縮記帳の問題では、補助金相当額を直接減額方式で圧縮したあと、その圧縮後の帳簿価額14,000千円を基礎に償却費を求めています。ここからわかる頻出の判断軸は次のとおりです。

頻出公式は、次の形で先に固定します。

| 論点 | 公式・手順 | ひっかけ | |---|---|---| | 定額法 | 減価償却費 = (取得原価 - 残存価額) ÷ 耐用年数 × 月数/12 | 月中取得・売却なら月割条件を確認します | | 定率法 | 減価償却費 = 期首帳簿価額 × 償却率 × 月数/12 | 取得原価ではなく期首帳簿価額を基礎にします | | 売却時簿価 | 取得原価 - 売却日までの減価償却累計額 | 売却年度の償却を入れてから売却損益を出します | | 売却損益 | 売却価額 - 売却時簿価 | プラスなら売却益、マイナスなら売却損です |

加えて、固定資産では2022年のように直接控除法と間接控除法の違いから取得原価を逆算させる問題もあります。決算整理前残高が何を意味しているかを読み違えないことが重要です。

貸倒引当金は「どの債権に対するものか」で表示と費用区分が変わる

貸倒引当金を債権控除型の評価勘定として整理する図解

貸倒引当金は、名称に「引当金」と付いていても、貸借対照表上は一般の負債と同じ扱いではありません。売掛金や受取手形などの債権に対する 評価勘定 として機能し、債権から控除する形で表示されるのが基本です。

一次試験では、次の点が繰り返し問われます。

2024年の問題では、検収基準による売掛金残高を先に確定してから貸倒引当金を計算しています。2025年の問題では、売掛金と営業未収入金に対応する繰入は販管費、短期貸付金に対応する繰入は営業外費用として扱う点が問われました。したがって、貸倒引当金では次を整理しておきます。

また、貸倒懸念債権は一律率ではなく個別評価するという論点も2024年に出題されています。一般債権と貸倒懸念債権を同じ感覚で処理しないことが大切です。

一般の引当金は「将来の支出に備える負債」として考える

一般の引当金を将来支出に備える負債として計上する図解

貸倒引当金以外の引当金は、将来の特定の支出や損失に備えるために計上します。一次試験では、次のような条件を満たすかどうかを問う正誤問題が多いです。

貸借対照表では、支払時期が1年以内なら流動負債、1年超なら固定負債に入るのが基本です。賞与引当金、退職給付引当金、修繕引当金、製品保証引当金などは、名称暗記よりも「なぜ当期に負債を立てるのか」を理解しておくと選択肢を切りやすくなります。

この論点は、貸倒引当金と違って 負債そのもの を立てる点が重要です。引当金という言葉だけでひとまとめにせず、債権控除型なのか負債計上型なのかを必ず区別してください。

社債は額面・発行価額・帳簿価額を区別し、償却原価法で追う

社債の額面、発行価額、帳簿価額を償却原価法で追う図解

社債は負債の会計の中心論点です。一次試験では、次の3つを混同しないことが重要です。

割引発行なら発行価額は額面より低く、償還に向かって帳簿価額が増えていきます。逆に打歩発行なら、帳簿価額は償還に向かって減っていきます。ここで使うのが 償却原価法 です。

償却原価法は、額面と発行価額の差額を期間配分して帳簿価額へ反映する処理です。一次試験では、簡便に次の流れで押さえます。

| 発行形態 | 帳簿価額の動き | 毎期の処理イメージ | |---|---|---| | 割引発行 | 発行価額から額面へ増える | 差額償却額を帳簿価額へ加算します | | 打歩発行 | 発行価額から額面へ減る | 差額償却額を帳簿価額から減算します |

定額法で差額を配分する問題なら、1期の償却額 = (額面金額 - 発行価額) ÷ 償還までの期間 を基礎にします。利息法の与件がある場合は、帳簿価額に実効利子率を掛けた利息額と、実際のクーポン支払額との差で帳簿価額を動かします。

試験で押さえるべき判断軸は次のとおりです。

社債そのものを正面から計算させる問題だけでなく、借入金との違い、直接金融と間接金融の違い、財務活動区分とのつながりで問われることもあります。負債の中でも表示と評価の両面が問われやすい論点です。

有価証券は保有目的で評価方法と純資産への影響が変わる

有価証券を保有目的別に分けて評価方法と純資産への影響を整理する図解

有価証券は貸借対照表の資産項目ですが、どの区分に属するかで評価方法が変わります。2020年、2024年に繰り返し問われている重要論点です。

この論点では、2024年の問題のように「子会社株式は連結で消えるから個別で評価損を考えなくてよい」という誤りが典型的です。個別財務諸表と連結財務諸表を混同しないようにします。また、その他有価証券の評価差額は当期損益ではなく純資産に置くため、貸借対照表の純資産の読み方とも直結します。

純資産は資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式を分けて整理する

純資産を資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式に分ける図解

純資産の会計では、よく似た名前の科目を役割ごとに切り分けることが最重要です。

2016年の増資と剰余金処分の問題では、払込額のうち少なくとも2分の1を資本金に入れ、残りを資本準備金などに入れられることが問われました。2020年の法定準備金の問題では、繰越利益剰余金を原資とする配当なら積立先は利益準備金になること、しかも上限は資本金の4分の1までであることが問われています。2022年には自己株式の取得・処分・消却の会計処理も出題されました。

この分野では次の判断軸が頻出です。

配当時の法定準備金は、次の順で計算します。

1. 配当額の 1/10 を仮の積立額にします。 2. 資本準備金と利益準備金の合計が、資本金の 1/4 に達するまで積み立てます。 3. 配当原資が利益剰余金なら利益準備金、その他資本剰余金なら資本準備金を積み立てます。

つまり、積立額は原則として 配当額 × 1/10 ですが、準備金合計が 資本金 × 1/4 に達する上限を超えて積み立てる必要はありません。

純資産の問題は、仕訳よりも「最終的にどの区分がいくら動くか」を問う出題が多いため、株主資本等変動計算書のイメージで追うと整理しやすくなります。

税効果会計は一時差異を将来の税金へつなぐ貸借対照表の論点

一時差異を将来の税金へつなぎ繰延税金資産と繰延税金負債を考える図解

税効果会計は、損益計算書の税金費用だけでなく、貸借対照表の 繰延税金資産 と 繰延税金負債 をどう置くかが重要です。一次試験では、次の対応関係を問う問題が多く出ます。

たとえば、会計上は当期に費用計上したが税務上は将来損金算入される項目は、将来の税負担を減らす効果があるため繰延税金資産になりやすいです。逆に、会計上はまだ利益にしていないのに税務上は将来課税が先送りされるようなズレは繰延税金負債になります。

税効果会計を苦手にしやすい理由は、会計利益と課税所得のズレを、当期の問題ではなく将来の問題として捉える必要があるからです。貸借対照表では次のように考えると整理しやすくなります。

この論点は、引当金、減価償却、圧縮記帳、有価証券評価差額など、他の資産・負債論点と横断的につながります。単独論点としてだけでなく、「この処理は会計と税務で同じか違うか」を考える癖をつけてください。

この章のまとめ

貸借対照表の分類、評価、純資産への影響を章末で整理する図解

一次試験過去問での出方

貸借対照表は財務・会計の中でも最頻出のコア論点です。2007年から2025年までほぼ切れ目なく出題され、特に 2022年、2023年度第1回・第2回、2024年、2025年は論点の幅が広く、分類・評価・純資産処理を横断して問われています。

よく出る出題パターンは次のとおりです。

- 棚卸資産: 2020年、2023年度第2回、2025年で、実地棚卸数量、低価法、棚卸減耗損、商品評価損の計算が繰り返し出ています。

- 固定資産: 2018年の売却損益、2022年の取得原価逆算、2023年度第2回の圧縮記帳など、取得から償却、売却まで一連で追わせる問題が出ています。

- 貸倒引当金・債権区分: 2024年と2025年で、売掛金残高の確定、差額補充法、営業債権と金融債権の区別まで問われています。

- 有価証券: 2020年、2024年で、売買目的、満期保有目的、その他有価証券、子会社株式の評価方法と表示先が出ています。

- 純資産: 2016年、2020年、2022年で、増資、法定準備金、自己株式の取得・処分・消却が頻出です。

- 負債・社債・税効果会計: 直接的な単独問題だけでなく、社債の表示区分や税効果会計の判断軸が他論点と組み合わせて出やすいので、単発暗記ではなく貸借対照表全体の中で理解しておく必要があります。

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