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財務・会計

重要

企業結合(合併・分割、連結決算)

のれん、連結修正、持分、企業結合の基本処理を整理する。

企業結合と連結決算

この章で覚えておきたいこと

企業結合と連結決算で覚えておきたい取得法、のれん、内部取引消去、非支配株主持分、持分法をまとめた図解
  • 企業結合は取得法で考えることが基本です。まず取得対価を決め、次に被取得企業の識別可能純資産を時価で測定し、その差額からのれんを求めます。
  • のれん = 取得対価 - 親会社持分相当の時価純資産です。自己創設のれんは計上せず、負ののれんが生じたときは負債ではなく利益として扱います。
  • 連結決算は親会社と子会社を一つの企業集団として見る手続です。親会社の子会社株式と子会社の資本、親子会社間の債権債務、内部売上、未実現利益を消去します。
  • 非支配株主持分は純資産の部に表示します。負債ではありません。また、連結当期純利益と親会社株主に帰属する当期純利益は区別して考えます。
  • 持分法は全面連結とは別物です。関連会社などについて、資産・負債を総額で取り込むのではなく、純資産と損益の持分相当額だけを反映します。
  • 子会社の決算日が連結決算日と一致しなくても、差が3か月以内なら正規の決算を基礎にできるという点もよく問われます。

基本知識

企業結合はまず支配を取ったかどうかで考える

企業結合では、複数の企業や事業が一つの経済的なまとまりとして結び付くかどうかを考えます。診断士試験で最初に見るべきなのは、単なる出資ではなく、支配を獲得したかどうかです。

支配を獲得した場合は、取得企業が被取得企業を連結の対象にします。ここでいう支配は、議決権比率だけで機械的に決まるわけではありません。過半数保有なら支配と判断しやすいですが、実質的に意思決定機関を支配しているかが本質です。

一方で、重要な影響力があるだけなら関連会社であり、子会社ではありません。過去問では「支配」と「重要な影響」を入れ替えた選択肢が頻出です。子会社なら全面連結、関連会社なら持分法と切り分けて覚えることが重要です。

支配を獲得した子会社は全面連結、重要な影響だけの関連会社は持分法で処理すると示す図解

のれんは取得対価と時価純資産の差額で求める

のれんは、被取得企業の識別可能純資産を超えて支払った対価です。したがって、計算の出発点は次の形になります。

  • のれん = 取得対価 - 被取得企業の識別可能純資産の時価 × 親会社持分比率

100%取得なら、親会社持分比率を掛ける必要はなく、取得対価と時価純資産の差額をそのまま見れば足ります。70%取得や80%取得の問題では、親会社持分部分との比較でのれんを求め、残りは非支配株主持分として扱います。

ここで重要なのは、比較対象が帳簿価額ではなく時価純資産であることです。土地などに含み益があれば、その評価差額を反映してから計算します。株式交付による合併でも、取得対価は発行株式の時価で測定し、資本金への組入額はのれん計算に影響しません。

のれんは、被取得企業の超過収益力への対価と考えます。したがって、自己創設のれんは客観的な取得原価がないため計上しません。また、取得対価より時価純資産の方が大きいときは負ののれんとなり、固定負債として残すのではなく、取得時の利益として処理します。

取得対価から時価純資産の親会社持分相当額を差し引いてのれんを求める図解

連結決算では企業集団の内部取引を消す

連結決算の目的は、親会社と子会社を別会社としてではなく、一つの企業集団として財務諸表に表すことです。そのため、グループ内部で完結している項目はそのまま残しません。

まず消去するのは、親会社の子会社株式と、子会社側の資本金・資本剰余金・利益剰余金などの純資産です。企業集団全体から見れば、自分で自分に投資している形になるからです。

次に、親子会社間の債権債務を消去します。親会社の売掛金と子会社の買掛金、貸付金と借入金などは、相手方勘定とともに全額消去するのが基本です。差額だけ残すのではありません。

さらに、親子会社間の売上・仕入も消去します。外部に販売していない以上、企業集団全体の収益でも費用でもないからです。親会社が子会社へ商品を売り、その商品が期末在庫として残っている場合は、在庫に含まれる利益を未実現利益として消去します。

親会社と子会社を一つの企業集団として見て内部債権債務や内部売上と未実現利益を消去する図解

非支配株主持分と連結利益の帰属先を区別する

親会社が子会社を100%保有していないときは、子会社純資産の一部は親会社以外の株主に帰属します。これが非支配株主持分です。

非支配株主持分は、連結貸借対照表では純資産の部に表示します。負債とする誤りが多いので注意が必要です。連結純資産の内訳として、親会社株主に帰属する部分と区別して示します。

連結損益計算書でも同じ発想が必要です。全面連結では子会社の収益・費用を100%取り込むので、連結上の当期純利益には子会社利益の全部が入ります。その後で、子会社利益のうち非支配株主に帰属する部分を切り分け、親会社株主に帰属する当期純利益を求めます。

このとき、ダウンストリーム取引かアップストリーム取引かも重要です。

  • ダウンストリーム取引: 親会社から子会社への販売です。未実現利益の消去は親会社側利益の修正です。
  • アップストリーム取引: 子会社から親会社への販売です。未実現利益の消去は子会社側利益の修正なので、非支配株主利益にも影響します。

また、子会社取得が期中なら、その後に発生した利益だけを連結に取り込みます。非支配株主持分も、取得後の利益のうち非支配株主持分相当額だけ増減します。

非支配株主持分は負債ではなく純資産の部に表示し、連結利益から帰属先を分ける図解

持分法は全面連結ではなく一行で反映する

持分法は、関連会社などに対して用いる会計処理です。ここでのポイントは、資産や負債を行ごとに合算しないことです。

持分法では、被投資会社の純資産のうち自社持分相当額を投資勘定に反映し、当期純利益のうち自社持分相当額を持分法による投資利益として計上します。つまり、全面連結のように売上・仕入・資産・負債を総額で取り込むわけではありません。

したがって、次の区別を明確にしておく必要があります。

  • 子会社: 支配しているので全面連結する
  • 関連会社: 重要な影響力があるので持分法を適用する
  • 持分法の損益: 投資先利益の持分相当額だけを反映する

過去問では、「関連会社も連結貸借対照表に総額で合算する」「子会社利益に持分比率を掛けて持分法損益とする」といった誤りが繰り返し出ています。

子会社は全面連結、関連会社は持分法で投資勘定と持分法投資利益に一行反映すると示す図解

連結で間違えやすい周辺論点

連結会計では、細かな制度知識も正誤判定でよく狙われます。

  • 子会社の決算日と連結決算日の差が3か月以内なら、子会社の正規の決算を基礎に連結できます。
  • ただし、その間に生じた重要な取引や事象は、必要に応じて調整します。
  • のれんは日本基準では効果の及ぶ期間にわたり規則的に償却し、通常は20年以内で考えます。
  • 期中取得なら、のれん償却は取得日から期末までの月数で按分します。
  • 連結貸借対照表の純資産表示では、株主資本、評価・換算差額等、新株予約権、非支配株主持分の区分を崩さないようにします。
決算日差異、のれん償却、期中取得、純資産表示の区分を確認する図解

この章のまとめ

企業結合と連結決算の章末まとめとして支配確認、取得法、のれん、連結消去、非支配株主持分、全面連結と持分法を確認する図解
  • 企業結合では、まず支配を獲得したかを確認し、取得法で処理します。
  • のれんは取得対価と時価純資産の差額であり、簿価純資産との差額ではありません。
  • 連結決算では、投資と資本、内部債権債務、内部売上、未実現利益を消去します。
  • 非支配株主持分は純資産の部に表示し、連結当期純利益と親会社株主に帰属する当期純利益を区別します。
  • 子会社は全面連結、関連会社は持分法です。支配と重要な影響を混同しないことが得点の分かれ目になります。
  • 期中取得、決算日差異、のれん償却月数のような周辺論点も、近年の過去問で繰り返し確認されています。

一次試験過去問での出方

2007年は連結貸借対照表の純資産表示、2008年・2018年・2023年度第2回はのれんと非支配株主持分の計算、2011年・2013年・2020年・2021年はのれんの本質と計算、2012年・2025年は親会社株主帰属利益や期中取得後の配分が問われました。

2014年・2019年・2023年度第1回は、全面連結と持分法の違い、関連会社の扱い、非支配株主持分の表示区分など、制度の切り分けを問う選択肢が中心でした。計算だけでなく、どの会社をどの方法で財務諸表に反映するかを言葉で説明できる状態まで持っていくことが重要です。