N
NARITAI

財務・会計

標準

その他

企業会計の周辺論点を、個別会計処理との関係で整理する。

企業会計の周辺論点

この章で覚えておきたいこと

企業会計の周辺論点で覚える判断軸を整理する図解
  • この章は、主要5トピックに入り切らない周辺論点をまとめる章ですが、税効果会計、外貨建取引、企業会計原則、中小企業会計は過去問で繰り返し問われています。
  • 税効果会計では、将来減算一時差異なら繰延税金資産、将来加算一時差異なら繰延税金負債という向きをまず判定します。
  • 評価性引当額は、繰延税金資産のうち回収できないと見込まれる部分です。将来課税所得が減るほど評価性引当額は増えやすくなります。
  • 外貨建取引では、貨幣項目か非貨幣項目かで換算方法が変わります。為替差損益は原則として営業外損益です。
  • 企業会計原則では、継続性、発生主義、保守主義、単一性などの意味を、日本語で短く説明できるようにしておく必要があります。
  • 中小企業の会計に関する指針は、法的強制ではなく、拠ることが望ましい実務指針である点が頻出です。

基本知識

税効果会計は「将来の課税所得を増やすか減らすか」で考える

税効果会計は、会計上の利益と税務上の課税所得の認識時期がずれることで生じる一時差異を、税金の期間配分に反映する考え方です。試験では、まず差異の向きを判定できるかが重要になります。

税効果会計で将来減算一時差異と将来加算一時差異を判定する図解

基本の整理は次のとおりです。

  • 将来減算一時差異: 将来の課税所得を減らす差異です。繰延税金資産を計上します。
  • 将来加算一時差異: 将来の課税所得を増やす差異です。繰延税金負債を計上します。

たとえば、賞与引当金のように、会計では先に費用計上するのに税務では後で損金算入されるものは、将来減算一時差異です。将来に課税所得を減らすので、繰延税金資産になります。

逆に、圧縮記帳のように当期の税負担を軽くして将来に課税を繰り延べるものは、将来加算一時差異です。将来の課税所得を増やすので、繰延税金負債になります。

過去問では、減価償却の耐用年数差、賞与引当金、棚卸資産評価損、圧縮記帳などがよく出ます。会計簿価と税務上の帳簿価額の差を見て、将来どちらに課税所得が動くかで判断する癖を付けておくと安定します。

評価性引当額は繰延税金資産の回収可能性の問題である

税効果会計で一段深く問われるのが、繰延税金資産をどこまで資産計上できるかという論点です。ここで登場するのが評価性引当額です。

評価性引当額は、繰延税金資産のうち、将来の課税所得で回収できないと見込まれる部分を控除するためのものです。したがって、将来課税所得の見込みが弱くなるほど、評価性引当額は大きくなります。

評価性引当額と繰延税金資産の回収可能性を示す図解

この論点では次の関係を押さえます。

  • 将来課税所得が減るほど、評価性引当額は増えやすい
  • タックスプランニングは、回収可能性の判断に影響する
  • 繰越欠損金や将来減算一時差異があっても、将来課税所得が見込めなければ、そのまま全額を資産計上できるわけではない

2014年の過去問は、「他の条件が一定なら将来課税所得の減少は評価性引当額の増加を招く」という基本を正面から問いました。計算よりも因果関係を言い切れるかが大切です。

企業会計原則は用語の意味を具体的に言えるようにする

企業会計原則は抽象的に見えますが、財務・会計の多くの処理の土台です。2017年の過去問でも、一般原則の意味を正しく理解しているかが問われました。

継続性、発生主義、保守主義、単一性を具体場面で整理する図解

ここでは次の語を押さえます。

  • 継続性の原則: 会計処理の原則や手続を毎期継続して適用し、みだりに変更しない考え方です。
  • 発生主義: 現金の支払いや受取りではなく、収益や費用が発生した期間に認識する考え方です。
  • 保守主義: 不確実性があるときに慎重に見積もる考え方ですが、合理的な範囲を超えた過大費用計上は認めません。
  • 単一性の原則: 提出先ごとに都合のよい会計数値を作り分けないという考え方です。

試験では、「現金の支出・収入の時点で認識する」と書いてあれば発生主義ではなく現金主義の説明だと見抜く必要があります。また、「保守的だから大きめに費用を計上してよい」といった選択肢も誤りです。保守主義は利益操作の口実ではありません。

外貨建取引は貨幣項目か非貨幣項目かで処理が変わる

外貨建取引の論点では、どの項目をどのレートで換算するかが出題の中心です。2022年の過去問もこの基本で解けます。

外貨建取引で貨幣項目と非貨幣項目の換算方法を分ける図解

まず、取引発生時には原則として取引日の為替レートで円換算します。そのうえで、決算日に次のように分けます。

  • 貨幣項目: 売掛金、買掛金、貸付金、借入金などです。決算日の直物為替レートで換算し直します。
  • 非貨幣項目: 前払金、前受金、固定資産などです。原則として取得時レートのままで、毎期の換算替えはしません。

この違いを外すと、前払金や前受金まで決算日レートで換算してしまいます。ここは典型的なひっかけです。

また、為替差損益は原則として営業外収益または営業外費用です。さらに、二取引基準とは、本体取引とその後の為替差損益を別個の取引として考える方法であり、自国通貨と外国通貨で二重に帳簿を作る意味ではありません。

中小企業会計は名称と位置付けを押さえる

周辺論点の中でも、中小企業会計は制度問題として安定して出ています。2009年の過去問では、**「中小企業の会計に関する指針」という正式名称と、「拠ることが望ましい」**という位置付けがそのまま問われました。

中小企業の会計に関する指針の位置付けを示す図解

この指針は、中小企業が計算書類を作成する際の会計処理や注記を示すものです。法令ではないため、強制適用ではありません。ここを「義務付けられる」とすると誤りになります。

また、中小企業会計では、一般投資家向けのディスクロージャーというよりも、次の性格が重視されます。

  • 債権者や取引先との利害調整
  • 税務との整合
  • 実務負担に配慮した簡便性

このため、上場企業向けの開示制度と同じ発想で捉えると判断を誤ります。

この章のまとめ

企業会計の周辺論点の章末チェックポイントをまとめる図解
  • 税効果会計では、将来減算一時差異は繰延税金資産、将来加算一時差異は繰延税金負債です。
  • 評価性引当額は、繰延税金資産の回収可能性を表す論点であり、将来課税所得が小さいほど増えやすくなります。
  • 企業会計原則では、継続性、発生主義、保守主義、単一性の意味を短く説明できるようにします。
  • 外貨建取引では、貨幣項目は決算日レート、非貨幣項目は原則取得時レートで処理します。
  • 為替差損益は原則として営業外損益であり、二取引基準の意味も押さえておきます。
  • 中小企業の会計に関する指針は、中小企業が拠ることが望ましい指針であって、法的強制ではありません。

一次試験過去問での出方

2009年は中小企業の会計に関する指針の名称と位置付け、2011年・2014年・2025年は税効果会計、2017年は企業会計原則、2022年は外貨建取引が出題されました。周辺論点に見えても、制度の意味を日本語で正確に言えるかがそのまま正誤判定につながっています。

とくに税効果会計は、単なる用語暗記ではなく、差異の向き、一時差異と評価性引当額の関係、繰延税金資産と繰延税金負債の使い分けまで問われています。主要論点を学んだあとにこの章で周辺知識を整理すると、選択肢の切り分けがかなり安定します。