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NARITAI

企業経営理論

重要

調査方法(データ情報源、具体的な調査手法)

データ情報源、調査手法、定性・定量の使い分けを重点的に扱う。

調査方法

この章で覚えておきたいこと

  • マーケティング・リサーチは、まず既存情報である二次データを確認し、不足する情報を一次データで集めるのが基本です。
  • 一次データと二次データは、社内外ではなく、今回新たに集めたか既に存在していたかで区別します。
  • 内部データと外部データは二次データの分類です。自社の売上、顧客情報、POSデータは、社内に既にあるなら内部二次データです。
  • 定性調査は、発言、行動、意味づけを深く理解し、探索的に仮説を作る場面に向きます。
  • 定量調査は、数量化されたデータで、規模、割合、差、関係性、仮説検証を扱う場面に向きます。
  • 探索的調査、記述的調査、因果的調査は目的が違います。探索は仮説発見、記述は実態把握、因果は原因と結果の確認です。
  • デプスインタビューは1対1で深く掘り下げ、グループインタビューは参加者同士の相互作用を活用します。
  • 観察法、家庭観察、アイトラッキング、fMRI、GPSなどは、本人が言語化しにくい行動や非意識の反応を捉えるのに有効です。
  • 全数調査・悉皆調査は母集団全体、標本調査は母集団の一部を調べます。標本調査では代表性が重要です。
  • 尺度は名義、序数、間隔、比例を区別し、分析手法をデータの性質に合わせます。
  • 相関係数がゼロでも、線形関係が見られないだけで、あらゆる関係がないとは限りません。
  • POSデータは販売時点データであり、陳列、販促、天候などのコーザルデータは別途収集して結び付ける必要があります。

基本知識

データ情報源の基本

マーケティング・リサーチで最初に見るべき軸は、データの情報源です。試験では、一次データ、二次データ、内部データ、外部データの区別が繰り返し問われます。

  • 一次データ

    • 今回の調査目的に合わせて新たに収集するデータです。
    • アンケート、面接、電話調査、観察、実験、会場調査、ホームユーステストなどで得られます。
    • 調査目的に合わせやすい反面、時間と費用がかかります。
  • 二次データ

    • 既に存在するデータを利用するものです。
    • 低コストで早く使えますが、調査目的、定義、対象時点、鮮度が合わない場合があります。
    • 社内に蓄積された売上データや顧客情報も、既に存在していれば二次データです。
  • 内部データ

    • 自社の販売データ、顧客データ、問い合わせ履歴、会員データ、Webログ、POSデータなどです。
    • 企業の実態に近く、継続的に使いやすい一方で、自社顧客や既存接点に偏りやすいです。
  • 外部データ

    • 官公庁統計、業界団体資料、民間調査会社のレポート、競合情報、公開統計などです。
    • 市場全体や業界比較を把握しやすい一方で、自社の個別課題にそのまま合うとは限りません。

2024年の問題では、自社の売上や顧客情報を一次データとする選択肢が誤りとして問われました。内部データか外部データかと、一次データか二次データかは別の分類です。

調査目的による分類

調査方法は、何を明らかにしたいかによって選びます。手法名だけでなく、調査目的と対応させて覚えることが重要です。

  • 探索的調査

    • 課題がまだ曖昧な段階で、仮説や発見を得るために行います。
    • インタビュー、観察法、エスノグラフィー、リード・ユーザー法、自由記述分析などが向きます。
    • 1つの方法だけに限定する必要はなく、複数の方法を組み合わせて洞察を深めます。
  • 記述的調査

    • 市場規模、購買頻度、認知率、満足度、属性別の違いなど、実態を数量的に把握します。
    • 質問票調査、インターネット調査、郵送調査、電話調査、POSデータ分析などが使われます。
  • 因果的調査

    • 価格変更、陳列、広告、販促などが結果に与える影響を確認します。
    • 実験法、市場テスト、A/Bテストなどが代表です。
    • 因果関係を確認するには、他の要因を統制する必要があります。

2011年の問題では、実験法は因果関係を明らかにできる一方、その他の要因の影響を統制できなければ結果を信頼しにくいことが問われました。相関があることと、因果関係があることは別です。

定性調査と定量調査

定性調査と定量調査は、優劣ではなく役割の違いで理解します。

  • 定性調査

    • 発言、行動、感情、文脈、意味づけを深く理解します。
    • 潜在ニーズの発見、仮説づくり、製品利用場面の理解に向きます。
    • 少数サンプルで深く見るため、結果をそのまま市場全体に一般化するのは危険です。
    • 質的研究は、データから帰納的に仮説を見いだす場面で使われやすいです。
  • 定量調査

    • 数値化されたデータで、割合、平均、差、相関、分布を把握します。
    • 仮説検証、市場規模推定、セグメント間比較、効果測定に向きます。
    • 量的研究は、既存理論や仮説を演繹的に検証する場面で使われやすいです。

2021年の問題では、質的研究と量的研究の説明を逆にした選択肢が出ました。質的研究は帰納的な仮説発見、量的研究は演繹的な仮説検証という対応で押さえます。

サーベイ調査の主な方法

サーベイ調査は、質問票などで対象者の意識、態度、属性、行動を集める方法です。媒体や接触方法によって特徴が変わります。

  • インターネット調査

    • 低コストで短期間に大量回収しやすい方法です。
    • 画像や動画を提示しやすく、自由記述をテキストマイニングに使うこともできます。
    • 登録モニターやインターネット利用者に偏る可能性があります。
    • 匿名性により、面接や電話より正直な回答が得られる場合もあります。
  • 面接調査

    • 調査員が対象者と直接やり取りします。
    • 回答内容を深掘りしやすく、質問の理解を補えます。
    • 調査員の力量や誘導、対象者の社会的望ましさバイアスに注意が必要です。
  • 電話調査

    • 比較的短期間で実施しやすい方法です。
    • 視覚資料を使いにくく、長い質問には向きません。
    • 在宅時間や電話応答者に偏りが出ることがあります。
  • 郵送調査

    • 広範囲に配布でき、対象者が都合のよい時間に回答できます。
    • 回収率が低くなりやすく、質問の誤解をその場で補正しにくいです。
  • 留置調査

    • 調査票を対象者に渡し、後日回収する方法です。
    • 回答時間を確保しやすく、郵送より回収率を高めやすいです。
    • 配布と回収に人手がかかり、コストは高くなりがちです。

2011年の問題では、インターネット調査を「面接法や電話法ほど正直な回答が得られない」とする記述が不適切でした。匿名性が高い調査では、むしろ答えにくい内容を回答しやすい場合があります。

面接法とインタビュー調査

インタビュー調査は、対象者の意味づけ、価値観、感情、経験を掘り下げる手法です。頻出なのはデプスインタビューとグループインタビューの違いです。

  • デプスインタビュー

    • 1対1で行う深層面接です。
    • 価値観、動機、生活背景、購買理由を深く聞くのに向きます。
    • 他者の影響を受けにくい一方、1人当たりの時間と費用は高くなりがちです。
    • グループダイナミクスを利用する手法ではありません。
  • グループインタビュー

    • 複数人を集め、司会者の進行で意見を引き出します。
    • 参加者同士の発言が刺激になり、相互作用から新しい発想が出ることがあります。
    • 司会者は中立性だけでなく、話しやすい雰囲気や信頼関係を作る必要があります。
    • 少人数調査なので、市場全体の一般論を導く目的には向きません。
  • フォーカスグループインタビュー

    • 特定テーマについてグループで深掘りする方法です。
    • コンセプト評価、利用場面の理解、仮説形成に向きます。
    • 定量的な代表性ではなく、発見や洞察を得る目的で使います。

2014年の問題では、デプスインタビューをグループダイナミクスで説明した選択肢が誤りでした。2019年の問題では、デプスインタビューは低コストではない点、グループインタビューでは司会者の場づくりが重要である点が問われました。

観察法、家庭観察、ホームユーステスト

観察法は、対象者が実際にどう行動しているかを観察する調査です。本人が言葉にできない行動、無意識の癖、使用上の不満を見つけやすい方法です。

  • 観察法

    • 店舗内の動線、棚前行動、商品使用場面などを観察します。
    • 実験的条件下での行動観察や、調査者自身の体験を記録する自己観察も含まれます。
    • 行動は見えますが、行動の理由や心理までは直接分からないため、インタビューと組み合わせることがあります。
  • エスノグラフィー

    • 対象者の生活や利用現場に入り込み、文化、習慣、文脈を観察します。
    • 文具、食品、日用品のように、利用場面そのものが重要な製品で効果を発揮します。
    • 2016年の問題では、「顧客の生活に入り込むなどして観察」を行う手法として問われました。
  • 家庭観察

    • 家庭内での製品使用状況、保管場所、家族間の使い方を観察します。
    • 利用者本人も気づいていない使い方や不便を把握しやすいです。
  • ホームユーステスト

    • 試作品や新商品を対象者の家庭で一定期間使ってもらい、使用感や満足度を調べます。
    • 実際の使用環境に近い評価を得やすい一方、使用条件を完全には統制しにくいです。

2021年の問題では、家庭にビデオを設置して一定期間、製品使用状況を観察する調査をギャング・サーベイと呼ぶ選択肢が誤りでした。これは家庭観察やエスノグラフィーの発想であり、名称の取り違えに注意します。

非意識データとニューロ・マーケティング

近年のリサーチでは、対象者の言語回答だけでなく、行動データや身体反応データも活用されます。

  • アイトラッキング

    • 視線の動き、注視時間、見落としやすい箇所を測定します。
    • 広告、棚割、Web画面、パッケージ評価で使われます。
  • fMRI

    • 脳内の血流変化を測定し、刺激への反応を把握しようとする方法です。
    • ニューロ・マーケティングの文脈で出ますが、解釈や費用面の制約があります。
  • GPS

    • 移動経路、来店行動、生活圏を把握します。
    • アンケートでは得にくい実際の行動データとして使えます。

非意識データは、アンケートなどの意識データと組み合わせることで理解が深まります。ただし、データの分析や解釈をリサーチャーだけに任せ、戦略策定まで丸投げするのは不適切です。分析結果を事業判断へどう生かすかは、企業側が課題や戦略と結び付けて考える必要があります。

モチベーション・リサーチ

モチベーション・リサーチは、消費者の購買行動の背後にある深層心理、無意識的動機、非合理的な欲求を探る調査です。1950年代から60年代にかけて盛んに行われ、精神分析や臨床心理学の発想を応用しました。

主な特徴は次のとおりです。

  • 消費者が直接説明しにくい動機を探ります。
  • 深層面接や投影法を使います。
  • 少数サンプルになりやすく、解釈が分析者に依存しやすいです。
  • 近年はインターネット調査、自由記述、テキストマイニングで弱点を補う考え方もあります。

2012年と2023年度第2回の問題では、方法論上の弱点として、サンプルサイズの確保が難しいことと、解釈の客観性を確保しにくいことが問われました。「非合理的な動機の把握が困難」は誤りです。モチベーション・リサーチは、まさに非合理的な動機を探るための手法です。

投影法の代表例

投影法は、本人に直接答えさせると防衛的になりやすい内容を、刺激や第三者を介して表現させる方法です。試験では手法名と課題内容の対応が頻出です。

  • 語句連想法

    • 刺激語を示し、思い浮かぶ言葉を答えさせます。
    • ブランド、商品、カテゴリへの連想を探る場面で使います。
  • 第三者技法

    • 「一般的な主婦はどう考えているか」のように、本人ではなく第三者について答えさせます。
    • 直接言いにくい本音を投影させる狙いがあります。
  • TAT

    • 絵や場面を見せて、そこから物語を語らせます。
    • 2023年度第2回の問題では、刺激語に反応する方法をTATとする選択肢が誤りでした。
  • 文章完成法

    • 未完成の文章を提示し、続きを完成させます。
    • 複数の文章を正しい順序に並べ替える方法ではありません。
  • 漫画完成法

    • 人物の会話場面や吹き出しを示し、セリフを記入させます。
    • これを言語連想法と呼ぶ選択肢は誤りです。
  • ロールプレイング法

    • 特定の役割を演じさせ、反応や発言を観察します。
  • ロールシャッハテスト

    • インクのしみのような図形を見せ、何に見えるかを答えさせます。

投影法は暗記量が多く見えますが、試験では「刺激語なら語句連想」「絵から物語ならTAT」「未完成文なら文章完成」「吹き出しなら漫画完成」「インクのしみならロールシャッハ」と対応づければ判断できます。

全数調査、悉皆調査、標本調査

調査対象をどこまで含めるかも頻出です。

  • 全数調査

    • 母集団の全てを対象に調査します。
    • 回答が得られれば網羅性は高いですが、時間と費用の負担が大きいです。
  • 悉皆調査

    • 全数調査と同じく、母集団全体を対象にする調査です。
    • 「悉皆調査は一部を標本として抽出する」という記述は誤りです。
  • 標本調査

    • 母集団の一部を抽出して調べます。
    • 代表性のある標本を取ることが重要です。

2024年の問題では、全数調査と悉皆調査、標本調査の関係が問われました。2025年の問題では、全数調査は現実的負担が大きいため、単純無作為抽出法や層化抽出法などによる標本調査がよく用いられるという記述が正解でした。

標本抽出法

標本調査では、どう選ぶかによって偏りや精度が変わります。

  • 単純無作為抽出

    • 母集団の各対象が同じ確率で選ばれるように抽出します。
    • 基本的で分かりやすい方法ですが、母集団リストが必要です。
  • 層化抽出

    • 性別、年齢、地域などで母集団を層に分け、各層から抽出します。
    • 母集団の構成比を反映した標本を作りやすいです。
    • 2018年の問題では、男女構成比に応じた標本抽出を系統的抽出法とする選択肢が誤りでした。これは層化抽出の考え方です。
  • 系統抽出

    • 名簿などに並んだ対象から、一定間隔で抽出します。
    • 例えば、無作為に開始点を決め、その後は10人おきに選ぶような方法です。
    • 並び順に周期的な偏りがあると、標本が偏る可能性があります。

サンプリングの問題では、「母集団の属性比率を反映させるなら層化抽出」「一定間隔で選ぶなら系統抽出」と見分けます。

尺度の種類

尺度は、データがどの程度の意味を持つかを表します。分析手法の前提になるため、必ず区別します。

  • 名義尺度

    • 分類だけを表します。
    • 例は、性別、地域、ブランド名、都道府県、購買有無です。
    • 数字が付いていても、数字自体に大小や差の意味はありません。
  • 序数尺度

    • 順序を表します。
    • 例は、満足度順位、好意度ランク、1位から5位までの順位です。
    • 順序はありますが、1位と2位の差が2位と3位の差と同じとは限りません。
  • 間隔尺度

    • 差に意味がありますが、絶対的なゼロ点はありません。
    • 例は、摂氏温度や、実務上近似的に連続尺度として扱う7点尺度などです。
    • 比率の意味は持ちません。
  • 比例尺度

    • 絶対的なゼロ点があり、差だけでなく比にも意味があります。
    • 例は、売上高、利益、年収、購入金額、購買回数です。

2016年の問題では、売上高や利益を間隔尺度に含める選択肢が誤りでした。売上高や利益はゼロが意味を持つため比例尺度です。2024年の問題では、回答番号が分類だけを表す尺度を間隔尺度とする選択肢が誤りでした。これは名義尺度です。

分析手法と尺度適合

分析手法は、データの尺度や目的に合わせて選びます。試験では「便利そうな分析名」に飛びつかないことが大切です。

  • クロス集計とカイ二乗検定

    • 名義尺度同士の関係、例えば居住地と購買有無、性別と選択ブランドの関係を見るときに使われます。
    • 連続量の平均値差を調べる方法ではありません。
  • t検定

    • 2つのグループの平均値に差があるかを調べます。
    • 例は、男女で平均購入金額に差があるかの確認です。
  • 相関分析

    • 2つの量的変数の線形的な関係の強さと方向を見ます。
    • 相関係数は因果関係を証明しません。
    • 相関係数がゼロでも、曲線的な関係や非線形の関係が存在する可能性があります。
  • 回帰分析

    • 目的変数に対して、説明変数がどのように関係するかを推定します。
    • 因果を主張するには、理論、設計、統制、実験条件などが必要です。
  • クラスター分析

    • 似ている対象をまとめ、相互に排他的なグループに分類します。
    • セグメンテーションや顧客分類に使われます。
  • テキストマイニング

    • コールセンター、Webサイト、SNS、自由記述などの文字データから、語の頻度や関係を分析します。
    • 顧客の声や市場ニーズの抽出に有効です。

2019年の問題では、クラスター分析、相関と因果、順序尺度での平均値、平均値差とカイ二乗検定の違いが問われました。2025年の問題では、7点尺度の満足度と都道府県の関係をカイ二乗分析で調べる記述、相関係数ゼロを無関係と断定する記述が誤りとして問われました。

POSデータとコーザルデータ

POSデータは、販売時点で記録される購買データです。

  • いつ売れたか。
  • どの商品が売れたか。
  • いくらで売れたか。
  • 何個売れたか。
  • どの店舗で売れたか。

一方、コーザルデータは販売量に影響を与える要因データです。

  • 陳列位置やフェース数。
  • 価格変更や値引き。
  • チラシ、クーポン、キャンペーン。
  • 天候、曜日、イベント。
  • 競合店の施策。

2014年の問題では、陳列情報や販促情報などのコーザルデータをPOSデータから直接、簡単に取得できるとする選択肢が誤りでした。POSデータは結果としての販売情報を捉えますが、販売に影響した要因は別途収集して結び付ける必要があります。

自発データの偏り

コールセンター、Webサイト、サービスセンター、手紙、ハガキ、SNS投稿、レビューなど、顧客が自発的に寄せるデータは重要です。顧客の不満、要望、利用実態、潜在ニーズの手がかりになります。

ただし、自発データには偏りがあります。

  • 強い不満や強い満足を持つ人ほど投稿しやすいです。
  • 声を出さない多数派の意見が見えにくいです。
  • 製品Aと製品Bの苦情件数を比べるだけでは、販売数量や利用者数の違いを反映できません。
  • 苦情件数が多いからといって、直ちに販売中止と判断するのは危険です。

2016年の問題では、コールセンターやWebサイトに寄せられる顧客の声をデータマイニングに用いることは有効とされました。一方、2025年の問題では、手紙やハガキの不満件数だけを根拠に製品Bの販売中止を決める選択肢が誤りでした。有効だが偏るというバランスで理解します。

質問票作成で注意すること

質問票調査では、回答者が同じ意味で解釈できるように設問を作る必要があります。

  • 1つの設問で1つの内容だけを尋ねます。
  • 「あと味がすっきりしていること」と「健康促進効果があること」を1つの選択肢に混ぜるような設問は避けます。
  • 誘導的な表現や、望ましい回答を暗示する表現を避けます。
  • 専門用語や曖昧な言葉を避け、対象者が理解できる表現にします。

2016年の問題では、1つの選択項目に複数の内容を含めるダブルバーレル質問が誤りとして問われました。回答者がどちらの要素に反応したのか分からなくなるためです。

ジョハリの窓と調査手法

ジョハリの窓は、「自分で分かっているか」と「他人が分かっているか」の2軸で自己を4つに分ける考え方です。2024年の問題では、消費者の自己データをどのリサーチ手法で捉えるかが問われました。

  • 開放の窓

    • 自分も他人も分かっている自己です。
    • アンケート、インタビュー、観察のいずれでも得やすい情報です。
  • 盲点の窓

    • 自分は気づいていないが、他人からは分かる自己です。
    • 行動観察調査が有効です。
    • 本人が気づいていない癖や行動特性は、自己申告だけでは取りにくいです。
  • 秘密の窓

    • 自分は知っているが、他人には見せていない自己です。
    • 匿名性の高いアンケートや、信頼関係を作ったインタビューが有効になる場合があります。
  • 未知の窓

    • 自分も他人もまだ分かっていない自己です。
    • 単純な定量アンケートだけで直接捉えるのは難しく、探索的調査、観察、投影法、実験などを組み合わせて接近します。

2024年の問題では、行動観察調査は「盲点の窓」のデータ収集に有効である、という対応が正解でした。本人が知っているか、他者から観察できるかを軸に考えると判断しやすいです。

新製品開発と調査手法

調査方法は、新製品開発の各段階でも問われます。

  • アイデア探索では、観察、インタビュー、リード・ユーザー法、自由記述、顧客の声の分析が有効です。
  • コンセプト評価では、グループインタビュー、デプスインタビュー、質問票調査を組み合わせます。
  • 試作品評価では、会場調査、ホームユーステスト、観察、実験が使われます。
  • 市場導入前には、市場テストや限定販売で反応を確認します。

2019年の問題では、市場テストは実際の市場だけに限られず、仮設店舗や限定環境でのテストもあり得ることが問われました。また、知覚マップで空白領域が見つかっても、そこに消費者ニーズや市場性があるとは限りません。分析結果は、需要や収益性の確認と合わせて判断します。

調査手法を選ぶ判断手順

選択肢問題では、次の順で確認すると崩れにくくなります。

  1. 知りたいことが「既にある情報で分かるか」を確認します。
  2. 既存情報なら二次データ、新たに集めるなら一次データです。
  3. 深い理由や潜在ニーズなら定性、割合や差の確認なら定量を考えます。
  4. 仮説発見なら探索的調査、実態把握なら記述的調査、原因確認なら因果的調査です。
  5. 1対1ならデプスインタビュー、相互作用ならグループインタビューです。
  6. 本人が言語化しにくい行動なら、観察法、家庭観察、非意識データを考えます。
  7. 母集団全体か一部抽出かを確認し、全数・悉皆と標本を分けます。
  8. 尺度水準を確認し、分析手法が合っているかを見ます。
  9. 苦情、投稿、手紙などの自発データは、偏りを前提に読みます。

この章のまとめ

調査方法は、用語暗記だけではなく、調査目的、データの出所、収集方法、分析方法をつなげて判断する分野です。

  • まず、一次データか二次データかを判定します。社内データでも既存なら二次データです。
  • 次に、内部データか外部データかを見ます。これは二次データの出所の分類です。
  • 調査目的は、探索的、記述的、因果的に分けます。
  • 定性調査は深い理解と仮説発見、定量調査は規模把握と仮説検証に向きます。
  • デプスインタビューは1対1、グループインタビューは相互作用です。
  • 観察法や非意識データは、本人が言えない行動や反応を補います。
  • モチベーション・リサーチは深層心理を探る手法で、弱点は少数サンプルと主観的解釈です。
  • 投影法は、語句連想法、第三者技法、TAT、文章完成法、漫画完成法、ロールシャッハを内容と対応させます。
  • 全数調査・悉皆調査は母集団全体、標本調査は一部抽出です。
  • 単純無作為抽出、層化抽出、系統抽出は抽出方法の違いで見分けます。
  • 名義、序数、間隔、比例の尺度を確認し、分析手法の適合を判断します。
  • 相関は因果ではありません。相関係数ゼロでも、すべての関係がないとは断定できません。
  • POSデータだけでコーザルデータまで取れると考えないことが重要です。
  • 苦情、手紙、投稿などの自発データは有用ですが、市場全体を代表するとは限りません。
  • ジョハリの窓では、本人が知っている情報か、他者が観察できる情報かで手法を選びます。

最後に、選択肢で「必ず」「すべて」「一般論を導ける」「直接、簡単に取得できる」「直ちに判断する」のような強い表現が出たら、調査の限界や偏りを確認します。マーケティング・リサーチでは、1つの手法だけで結論を出すより、目的に応じて複数のデータを組み合わせる姿勢が重視されます。

一次試験過去問での出方

2011年 第28問では、インターネット調査、観察調査、グループインタビュー、実験法、留置法の長所と限界が問われました。特に、匿名性のあるインターネット調査を一律に不正直な回答が多いと決めつけない点が重要です。

2012年 第28問では、モチベーション・リサーチと投影法が問われました。第三者技法、少数サンプル、解釈の主観性を押さえる問題です。

2014年 第27問設問2では、デプスインタビューとグループインタビュー、POSデータとコーザルデータ、年齢・時代・世代を分けるコーホート分析が問われました。

2016年 第29問では、尺度、顧客の声のデータマイニング、質問票の作り方、一次・二次データ、エスノグラフィーが問われました。

2018年 第30問では、標本抽出法と内部・外部データの区別が問われました。母集団の構成比を反映する抽出は層化抽出であり、系統抽出ではありません。

2019年 第32問では、観察法、グループインタビュー、デプスインタビュー、リード・ユーザー法、クラスター分析、相関と因果、尺度と検定方法が問われました。

2020年 第32問では、フォーカスグループの一般化の限界、エスノグラフィー、一次・二次データの区別が問われました。

2021年 第37問では、アイトラッキング、fMRI、GPSなどの非意識データ、探索的調査、家庭観察、質的研究と量的研究の違いが問われました。

2023年度第2回 第24問では、モチベーション・リサーチの批判点と投影法の名称対応が問われました。

2024年 第39問では、尺度、インサイト・リサーチ、質的データ分析、全数・悉皆・標本、一次・二次データが横断的に問われました。

2024年 第40問では、ジョハリの窓と調査手法の対応が問われました。盲点の窓には行動観察が有効です。

2025年 第28問では、モチベーション・リサーチ、相関係数ゼロの解釈、分析手法と尺度適合、苦情データの偏り、全数調査と標本抽出が問われました。